都市部における住宅ニーズと土地利用の効率化、不動産価値、利便性、ブランド的側面など複数の要因から、近年タワーマンション、通称「タワマン」の建設がさかんに行われています。建物の構造的な性能も比較的よろしく人気も高いタワマンですが、実は騒音問題が発生しない訳ではありません。このページでは、タワマンにおける騒音問題の発生原因とその解決方法について紹介しています。
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タワマンにおける騒音問題とは
タワーマンション(タワマン)で発生する騒音問題には一般的な集合住宅(アパートやマンション)と同様のものもありますが、それらにタワマン特有の騒音発生源が加わるため、通常の集合住宅よりも騒音の発生率が高くなる場合があります。タワマンにおける代表的な騒音発生源は以下の通りです。
- 上下階の生活音
一般的な集合住宅でも起こり得る騒音問題(トラブル)の多くは、上下階の生活音によるものです。特にフローリングの床を歩く音や走る音、床に物を落とす音、家具の移動音などが響くとトラブルの原因になりがちです。加えて、近年建設されるタワーマンションは和室を少なく(無く)しフローリングの割合を増やす傾向があるため、その傾向に比例して音が伝わりやすくなる特徴があります。 - エレベーター(機械室)の音
一般的なタワマンでは、エレベーターの機械室(エレベーターの制御を行う部屋)が屋上付近の高層階にあります。また、タワマンでは複数のエレベーターが一か所に集中する構造になりがちな上、常時稼働しているため、エレベーターによるモーター音や稼働音が高層階における騒音問題の原因になることがあります。特に当社へお問い合わせされるお客様の傾向では、「エレベーター近隣のお部屋」や「機械室の近隣のお部屋」に住む方から、機械室の音が気になるといったご意見が多く報告されています。 - 共用部や共用施設の音
共用部(ロビーや廊下、ゴミ収集室)での住民同士の会話やペットの鳴き声は騒音トラブルの原因になることがあります。特にタワマンはロビーや会議室、談話室、スポーツジムなど共用施設を多種備えている場合も多く、共用部・共用施設による騒音が響きやすい傾向にあります。また、エントランスの自動ドアや駐車場から車が出入りする際のエンジン音が響くことも問題になるケースがあります(これらの問題の多くは比較的低層階が中心になりがちです)。 - 風切り音
意外に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、タワマンでは「風切り音」が騒音問題の原因になることがあります。一般的な風切り音はそれ程気になるレベルのものではないため「風切り音などたいしたことはない」と思われる方は多いと思いますが、実はタワマンの高層階では強風時に風切り音が非常に強く響く場合があるため、風切り音はタワマン高層階特有の騒音トラブルと言って過言ではなく、当社にも非常に多くのお客様からお問い合わせをいただいております。一般に「強風が窓や外壁、屋上設備に当たる際の音」などが原因とされることが多く、特に平野部にあるマンションにお住まいの方で冬場に気になる方、台風が通過する前後にストレスを感じる方が多くいらっしゃるようです。 - 外部からの反響音
タワマンでは外部の音が反響しやすく一般的な集合住宅より大きく響くことがあります。特にタワマンは「交通の便が良く、商業施設や歓楽街に近い場所」に建造される傾向にあり、周囲の幹線道路や鉄道、商業施設による音や利用客の声など周辺施設による音が響きやすい場合があるためです。 - リフォームによる工事の音
タワーマンション内でのリフォームによる工事の音は騒音トラブルの一因になりがちです。特に、壁や床、天井などをリフォームする場合は近接する部屋に響く可能性が高いため、周辺住民に対して事前の告知を行う、施工業者に施工の時間を厳守してもらうなど十分な配慮が必要です。
タワマン騒音問題の解決方法について
上記にあるようにタワーマンションの騒音問題(トラブル)にはそもそも解決が難しいものもありますが、住民による対策や住民間での話し合い、管理会社や管理組合への相談で改善が見込まれる場合があります。これら一部の騒音問題については以下のような解決方法があります。
- 管理組合や管理会社を介した解決方法
住民間の関係が良好な場合、騒音の原因となっている住民間で直接話し合い、どのような音がどのくらい響いているのかを伝えることで誤解が解け、問題解決への1ステップになる場合があります。ただ、タワマンでは各フロアに住む住人の数が非常に多く、ご近所づきあいが希薄になりがちでもあるため、住民間の関係自体がない場合も多々あることになります。一般にタワマンの場合、第三者(管理組合や管理会社)を通じて相互理解を深めることで解決を目指す方法が適切と言えるでしょう。また、管理会社によりますが、騒音トラブルに対応する規約や対処法が準備されている場合もあるため、一般に管理会社の相談窓口に問い合わせることも有効な方法になり得ます。 - 防音対策を行う
上下階間の騒音トラブルの場合、防音性能の高いラグやカーペット、防音マットを敷けば歩く音や物音などの衝撃音が緩和され、下の階に響きにくくなります。特に小さいお子様のいる家庭では、突発的に走ったり飛び跳ねたりすることを止めるのは難しいため、騒音を軽減するためのプレイマットを活用することで問題が解決する場合もあります。また、外部からの騒音に対しては窓に防音カーテンを貼る、壁に防音シートを貼る、といった対策で外部からの音をある程度抑えることが可能です。
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リフォームを行う際は近隣や上下階へ事前に通知を行うことが必要です。リフォームの際にはどうしても多少の騒音が発生するものですが、事前に工事を知っているパターンと知らされていなかったパターンでは比較的後者が問題になるケースが多いためです。また、タワマンではリフォームの際の事前通知が義務化されている場合(マンションの規約にされている場合)があるため、そういった意味でも事前通知は必須と言えるでしょう。加えて、リフォームを担当する業者に対して施工時間を確認し、工事の時間を平日の日中などに制限することで、周囲に住む方に対して配慮を行うことも重要です。 - 構造的な騒音問題への対策
エレベーターや機械室など建物の構造上の騒音については管理会社に報告し、対応してもらうべきです(個人的な防音対策ではどうにもならないケースが多いためです)。管理会社の対応にもよりますが、騒音の報告によって防音対策の工事を検討・実施してもらえる場合があります。また、高層階の風切り音が強い場合はどの位置で音が大きいか、窓の密閉性はどうなっているかをチェックし、必要に応じて防音パッキンを装着するなどの対策を行うことが有効な場合があります。ただ、こちらも自身でどうにもならない場合があるため、比較的早急に管理会社に相談し、定期的な点検や対策を求めることが一般的と言えるでしょう。 - 警察への通報、法律や条例に基づく解決など
騒音の程度があまりにひどい場合は警察に通報することで対応していただける場合があります(地域性によって差があるため「一概に対応していただける」と申し上げることはできません)。また、軽犯罪とは言えない程度の騒音で日常生活に支障をきたしている場合、且つ可能な対応・対策をとってなお問題が解決しない場合は、法律事務所や弁護士に相談し、調停や訴訟が必要になる場合があります。
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騒音測定が必要な場合は当社にお任せください
管理組合や管理会社に対応を求める際、また、警察や弁護士に相談した際など、相談や対応を第三者に求める場合には騒音の証拠(騒音が発生していたことをデータで示す報告書など)が必要になるケースが多々あります。当社では測定・報告書作成などを一括して比較的安価に行えるサービスを提供しておりますので、騒音の解析報告書をお求めの際は当社までお気軽にお問い合わせください(>>お問い合わせはこちらから)。
【著者情報/略歴】2014年より日本騒音調査カスタマーサービス部門、HP記事担当。年間1,000件を超える騒音関連のお問い合わせに、日々対応させていただいています。当HPでは、騒音に関してお客様から、よくいただくご質問とその回答を一般化して紹介したり、当社の研究成果や学会(日本騒音制御工学会等)に寄稿した技術論文記事をかみ砕いて説明させていただいたり、はたまた騒音関連のニュースを解説させていただいたりしています。
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