マンションの低周波音発生源と対策方法
低周波騒音の発生源と対策方法(関連コンテンツ:低周波騒音の発生源と対策方法)のページでは一般的な低周波音・低周波騒音※の発生源を紹介していますが、こちらのページでは、特にマンションなどの集合住宅における代表的な低周波音・低周波騒音の発生源とその対策を紹介しています。
※当社では便宜上「人体に有害である低周波音」を「低周波騒音」と表現し、一般的な低周波音(周波数の低い音)と区別しています。
マンションにおける代表的な低周波騒音の発生源と対策方法
マンションは一般の住宅と異なる固有・特有の設備を備えている場合が多く、且つ多くの住人が住んでいるため住居ごとに機械設備が必要です。それらの設備の多さに比例して発生源が多様化する傾向があります。また、集合住宅では壁や天井、床が他の部屋と共有されるため、これらを大幅に改修するような工事が難しく、解決が困難な場合があります。つまり、一般にマンション内には戸建住宅よりも低周波音の発生源が多くなりがちで、且つ対策が困難になりがちでもある訳です。なお、マンションにおける代表的な低周波騒音の発生源とそれぞれに対する一般的な対策方法は次の通りです。
エアコン室外機・換気扇
室外機には冷媒を圧縮・循環させるコンプレッサー、空気を取り込むファンがあり、いずれも低周波音の発生源になる場合があります。加えて機器自体の振動が壁や地面を伝わり、それぞれの低周波音が共振することで増幅される場合があるため、低周波騒音を発生させやすい傾向があります。特に機械自体が古い場合、故障箇所がある場合には振動がひどくなりやすく、それに比例して低周波騒音を発生させる可能性が高くなります。
エアコン室外機・換気扇による低周波音への対策
根本的な対策方法としては静音設計のエアコンおよび対応室外機や換気扇を購入・交換することで低周波音の発生を抑えられる場合がありますが、工事代金などを含めると一般に安価とは言えません。次善の効果的な対策方法としては移動やバイパスの設置などがありますが、マンションでは室外機を設置できる箇所が限られていること、壁の工事を伴うバイパス工事が難しいことから、これらはあまり現実的な対策ではありません。したがって、現実的且つ経済的な対策としては、室外機であれば防振ゴムや防振マットによる振動の低減、換気扇であれば整流板の取り付けなどが限度になります(資金に余裕がある場合は上記の購入・交換など根本的な対策を試みるべきではあります)。
ヒートポンプ給湯器(エコキュートなど)
ヒートポンプ式の給湯器にはエアコンの室外機と同様にコンプレッサー、ファンが備わっており、いずれも低周波音の発生源になる場合があります。加えて、こちらもエアコン室外機と同様ですが、機器自体の振動が壁や地面を伝わり、それぞれの低周波音が共振することで増幅される場合があるため、低周波騒音を発生させやすい傾向があります。
ヒートポンプ給湯器(エコキュートなど)による低周波音への対策
こちらも根本的な対策方法はエアコン室外機と同様ですが、より静音を考えて作られた機種を購入・交換することで低周波音の発生を抑えられる場合があります(工事代金などを含めると一般に安価とは言えません)。次善の効果的な対策方法としては移動や配管の配置変更などがありますが、マンションでは設置箇所が限られていること、壁の配管工事が難しいことから、これらはあまり現実的な対策ではありません。したがって、現実的且つ経済的な対策としては、防振ゴムや防音パネルによる振動や騒音の低減などが限度です(資金に余裕がある場合は上記の購入・交換など根本的な対策を試みるべきではあります)。
エレベーターによる低周波音
エレベーターを動かすモーターや巻上機、油圧ポンプの稼働による振動、移動による空気振動やブレーキ音、建物との共振などにより低周波騒音が発生することがあります。また、エレベーターによる音自体は特に隣接する部屋に届きやすい傾向がありますが、低周波音には「遠くまで届きやすい性質」があるため、エレベーターから離れていれば届かないという訳ではありません。
エレベーターによる低周波音への対策
エレベーターの低周波音対策は共用部分を含むこともあり、いずれも個人で行えるものではありません。このため管理組合や管理会社へ相談し、最終的には専門業者に対応してもらう必要があります。なお、対策としては次の通りです。
・静音設計のエレベーターに変えてもらう(エレベーター設備自体の交換)
・モーターや巻上機を整備・交換してもらう
・エレベーター付近の床や壁に防振材を組み込んでもらう
・エレベーターのシャフトと居住スペースの間に防音壁を設けてもらう
・シャフト内に吸音材を設置してもらう
・モーターや巻上機の防振材を交換してもらう
ポンプ室から発生する低周波音
マンションには、通常、給排水のためのポンプ室が設けられていて、給水ポンプや加圧ポンプ、排水ポンプの動作が低周波騒音の原因になる場合があります。また、ポンプ稼働時のモーター音や振動が建物に伝わり、それらが共振することで低周波音が増幅され被害を及ぼす可能性があります。
ポンプ室から発生する低周波音への対策
ポンプ室の低周波音対策は個人で行えないため、管理組合や管理会社へ相談し、最終的には専門業者に対応してもらう必要があります。なお、対策としては次の通りです。
・各種ポンプを静音設計のものに変えてもらう(設備自体の交換)
・防振ゴムや防振架台を設置、または交換してもらう
・各配管の固定部分を防振性能が高い素材のものに交換してもらう
・ポンプ室内に防音パネルや吸音材を設置・貼り付けしてもらう
・ポンプ室の扉を防音仕様のものに変更してもらう
マンションにおける低周波音の対策は難しい
上記を閲覧していただければご理解いただけると思いますが、マンション内で発生する低周波音には根本的な解決が難しいものが多く、根本的な対策を行う場合はいずれも時間的・経済的に多くの負担を強いるものが多い傾向があります。例えば、各種設備に対して根本的な対策を行う場合は管理組合や管理会社に相談した上で、相談内容に対応してもらうよう交渉していく必要があります。また、各居室にある各種の機械を交換するのであれば、交換する際の機種の検討、設置の際の工事などかかる時間は少なくありませんし、加えて多額の費用を負担する必要があります。
引っ越す・購入の際に事前調査を行うことが一番の対策
マンションへの引っ越しや購入を検討されている場合は「低周波音」の評価・調査をすることで、ある程度低周波音の問題は回避することができます。例えば、管理会社や不動産会社に過去の低周波音が問題になったケースがないかを確認したり、可能であれば居住者にそういった問題がないか確認したりすることも良い方法です。ただ、一般に管理会社や不動産会社は低周波音のデータを有していないため、低周波音の影響が心配な場合にはご自身で調査を行うことも必要となるでしょう。もし引っ越しや購入費用の面で余裕があれば、検討段階で低周波音の調査も検討されてみてはいかがでしょうか(近年当社へ引っ越し先の低周波音調査に関するお問い合わせが増えています)。
住んでみて低周波音被害の可能性を感じたら
また、既にマンションにお住まいになっていて、且つ低周波音被害の可能性を感じた場合はご家族や周囲の方に確認・相談し、問題を明確にしていく必要があります。特に低周波音は感じる・感じない方それぞれいらっしゃいますので、ご自身が感じていても周囲の方は誰も影響を感じていない、といったケースも多々あります。もし低周波音による被害が疑われる場合、低周波騒音の有無を明確にしたい場合には、是非、当社までお気軽にご相談ください。また、管理組合や管理会社、不動産会社などに被害を訴える際には低周波音の定量的な報告書が必要になる場合もございますので、そういった際につきましても、お気軽に当社までお問い合わせいただけますと幸いです(>>お問い合わせはこちらから)。

【著者情報/略歴】2014年より日本騒音調査カスタマーサービス部門、HP記事担当。年間1,000件を超える騒音関連のお問い合わせに、日々対応させていただいています。当HPでは、騒音に関してお客様から、よくいただくご質問とその回答を一般化して紹介したり、当社の研究成果や学会(日本騒音制御工学会等)に寄稿した技術論文記事をかみ砕いて説明させていただいたり、はたまた騒音関連のニュースを解説させていただいたりしています。
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