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低周波音はなぜ遠くまで伝わるのか

低周波音はなぜ遠くまで伝わるのか

近年、苦情件数が増加傾向にある低周波音ですが、「なぜ障害物があっても伝わってくるのか」、「どうして距離があるのに伝わってくるのか」といった『低周波音が伝わってくるまでのメカニズム』は一般にあまり知られていません。このページでは、低周波音がなぜ遠くまで伝わるのか、といった低周波音のメカニズムについて紹介・説明しています。

そもそも音とは何か?

低周波音について知るためには、そもそも「音とは何か」という知識が必要です。まず、「音」は物体が振動することで生じますが、実はこの時点では私たちは音として認識できません。実際は、物体の振動が空気や水などに伝わり波を起こし、その波(音波)が私たちの耳に届くことではじめて「音」として認識される訳です。この「音」は高さ、大きさなど、生じる際にそれぞれ様々な特徴を持ちます。例えば、大きな物体を落としたときは大きな音になりますし、より多くの波を起こす音は高い音となって私たちの耳に伝わります。

周波数:音の高さによって音の性質は変わる

それぞれに様々な特徴を持つ音ですが、この音の特徴(性質)は概ね次の2種類のものによって定まります。

■周波数(単位:Hz(ヘルツ))

周波数によって音の高さが定まります。例えば、周波数の大きい音は高い音になる、周波数の小さい音は低い音になる、といった具合です。周波数は1秒間の振動数※によって定まるものですので、単位時間で振動数の大きい音ほど高くなり、振動数の小さい音ほど低くなります。

※振動数:一定時間内に発生する振動の回数で、一般に1秒あたりの振動の回数であらわされ、周波数とほぼ同様の意味で使われます(単位も周波数同様にヘルツ、Hzです)。

■振幅(単位:dB(デシベル)、Pa(パスカル))

振幅によって音の大きさが定まります。振幅の大きい音ほど大きく、振幅の小さい音ほど小さい音になります。

低周波音の特徴とは

世間一般で低周波音と呼ばれるのは、上記の周波数が極端に低く、耳で聞いた場合には「低い音」として聞こえる音です。また、明確な定義がある訳ではありませんが、特に1Hz~100Hzの音が低周波音と呼ばれています。この低周波音は非常に低い音であるため、人によっては聞こえない、空気の振動のように感じるが音は聞こえない、といった不思議な特徴を持ちます。

関連コンテンツ:低周波音・低周波騒音とは /その特徴と測定

低周波音が遠くまで届くメカニズム

低周波音が遠くまで届く要因は次の通りです。

■波長※の長さ

低周波音は高周波音と比べると波長が長く、障害物を回避しやすい性質があります。このため障害物による減衰を避けることができ、遠くまで伝わりやすくなります。

※波長:音波が1回振動するのにかかる距離

■エネルギーの保持

低周波音は特定の材質(硬い材質)に吸収されにくい傾向があり、特にコンクリートや金属などは低周波音を反射することが多いため、エネルギーが減らず、そのまま保持されやすくなります。また、低周波音は上記の性質から特定の構造物や空間で共鳴してエネルギーが増幅されるため、多少の減衰があったとしても発生時に持っていたエネルギーと近いエネルギーを保持した状態を長時間にわたって維持できます。

■音の屈折

空気中を伝わる低周波音は大気の温度や湿度の変化により屈折しやすく、この屈折が低周波音の伝播を補助する場合があります。特に、温度逆転層が存在する場合は音が地面に沿って伝わることがあるため、より遠くまで伝わる可能性が高くなります。

低周波音によって起こる健康被害とは

低周波音は一般に耳では聞こえにくい、または聞こえないものですし、多少晒(さら)される程度ではそれほどの被害はありません。ただ、低周波音に長時間・長期間晒されると不快感や圧迫感を生じるため、人によっては非常にストレスに感じる場合があります。また、長期間低周波音に晒されていると、頭痛や不眠、耳鳴りや微熱など、原因不明の病気のような症状が発生する場合もあるため、特に理由もなくそれらの症状が出た場合は低周波音の関与を疑ってよいかもしれません。

関連コンテンツ:>>低周波音(低周波騒音)と健康被害

低周波音被害の疑いがあるときは

低周波音によって被害を受けているか、つまり有害な低周波音に晒されているかどうかを確認する場合には測定が有効です。そして、一般的な騒音の測定器では低周波音を測定できないため、専用の測定器を用意する必要があります。当社では、一般に希少な低周波音を測定できる機材の用意、調査サービスの提供が随時可能ですので、低周波音の調査をご希望の際はお気軽にお問い合わせください。>>お問い合わせはこちらから

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