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騒音トラブルの責任は大家にもある?―マンション・アパートのオーナーが騒音トラブルに対してやるべきこと―

騒音トラブルの責任は大家にもある?
―マンション・アパートのオーナーが騒音トラブルに対してやるべきこと―

昨今、大きな問題になりがちな集合住宅の騒音トラブルですが、その責任の所在は誰にあるかご存じでしょうか。当然のことながらトラブルは入居者同士で起こるため、問題を突き詰めていくと当事者である「いずれかの入居者」に被害・損害への対応(賠償など)が求められることにはなります。ただし、このとき、入居者に部屋を貸していた大家に対しても一部の責任、ひいては賠償などの対応が求められる場合があるのです。このページでは主に、アパートやマンションのオーナーが負う義務や責任、入居者の騒音トラブルに遭遇したときに取るべき対処のポイント、その手順や方法について紹介しています。

騒音トラブルに対する法的な責任の所在は?

騒音トラブルは当事者間で起こるため「大家には責任が無いはずだ」と考えるオーナーの方は多いと思いますが、実はそうではありません。大家には、民法第601条による【賃料の支払いをもって賃貸建物を使用収益させる義務】が課されているため、賃貸契約を結んでいる賃借人=居住者に対して良好な住環境を提供する責任があります。つまり、騒音トラブルが発生していて、かつ大家がそれに対して対応しない場合、大家は上記の義務を放棄していることになるのです。具体的には、「賃借人による騒音の苦情を大家が受ける」「賃借人が騒音を発生させている事実がある」または「賃貸している建物で騒音問題が発生していることを大家が把握する」ことにより、大家には「入居者に害を及ぼす欠陥を是正するための責任」が発生します。
関連コンテンツ:賃貸不動産物件における騒音と賃借人の責任/善管注意義務

大家によるトラブル対処のポイント、手順や方法

では、大家が賃借人から騒音の苦情を受けた場合はどうすればよいでしょう?もちろん真摯に対応する必要がありますが、「苦情から~時間以内に注意しに行かなければならない」といった義務がある訳ではありません(対応が早いに越したことはありませんが)。あなたが大家であり、騒音トラブルに直面した場合は、落ち着いて、次の各ポイントについて順次対応すると良いでしょう。

■管理会社に対応が可能か確認する

管理会社に所有物件の管理業務を委託しているか否かによりますが、もし委託している場合は管理会社に騒音トラブルの内容を説明し、住人への聞き取りや注意喚起などの対応を行ってもらえるかどうかを確認しましょう。契約によりトラブルへの対応が可能であれば管理会社にトラブルへの対処を代行してもらうことができます。ただし、全てを管理会社まかせにすることは「問題が大きくなってしまった場合(例えば調停や裁判沙汰になってしまった場合など)」に「責任を放棄している」とみなされてしまう場合があるため、管理会社を頼ることができる場合でも、ご自身で以下の対応を行っておく方が無難です。

■トラブルの内容を詳細に把握する

騒音苦情を受けた際は苦情主(苦情を申し立てている人)に、問題について詳しく伺い、できる限り詳細を把握しましょう。また、苦情主一人からのみ意見を聞くだけではなく、上下階や隣家など周辺住戸に対する聞き取りを行い、客観的な事実確認を行い、問題を明確化することが解決への第一歩となります。ただし、苦情主以外に対する聞き取りを始める際は以下の確認・配慮した上での対応が望ましくあります。
・苦情主に「自身が苦情を申し立てていることを周辺住人にどの程度知られて良いか」を確認しておく
・周辺住人に知られたくない程度によって聞き取りの際に苦情主の情報が知られないよう配慮する

■段階的に注意喚起を行う

聞き取りの結果、騒音トラブルが明確になれば、次は注意喚起を行います。トラブルが明らかになった場合、賃貸人には注意喚起を行わなければならない義務があるからです。ただし、いきなり問題を発生させていると目される住戸に訪問し注意を行うのは問題を悪化させる可能性があるため、段階的に注意喚起を行うべきです。まずは掲示板に「騒音問題が発生していることを知らせる文書」や「問題解決のための協力を求める文書」を掲載しましょう。次に、掲示板への掲載で問題が収束しない場合、問題と目される階の住人宅全てに対してポスト投函によって注意喚起の文書を周知させましょう。ポスト投函でも解決の気配が無い場合、最終的には直接「騒音源と目される部屋の住人」に口頭で注意を行う必要がでてきます。直接注意を行う際は、以下の点に注意しつつ行うことが、ご自身や身の周りの人の安全ために重要となります。
・騒音の証拠がある場合は訪問前に準備しておく
・管理組合員など第三者の協力者を求め、なるべく一人で訪問しない
・感情的な表現は避け客観的な事実を伝える
・相手の感情を逆なでしないよう気を付ける
・苦情主の情報を与えない(苦情主を特定されないようにする)
関連コンテンツ:騒音トラブルにおける苦情代行活用のメリットとリスク

■行った対応を苦情主や第三者に説明しておく

自身が大家として行った対応は必ず苦情主や協力者に報告しておきましょう。自身が真摯・誠実に対応していることを苦情主や周囲に示すことができますし、もし苦情主に報告しなければ、「対応していない」と考え、新たなトラブルの火種になりかねません。報告の際は客観的かつ明確に、事実を伝えることが大切です。

■トラブルが解決しない場合は弁護士に相談する

どれだけ真摯に対応しても問題が解決しない、といったケースもあります。特に賃借人が騒音発生源且つ問題解決に協力してもらえない場合は強制退去を視野に入れなければなりませんが、日本では賃貸借契約の賃借人の立場が非常に強く、騒音主を強制退去させることは容易ではありません。ただし、上記までの対応を行った上で問題が解決しないのであれば、最終的な手段として訴訟を検討する必要がでてきます。また、弁護士への相談=即訴訟、という訳ではありません。弁護士は法律のプロフェッショナルなので、強制退去以外の解決法を提示してくれるかもしれませんし、法律のプロによる第三者の意見を得ることもできます。もし問題が長期化し、解決の糸口がつかめない、と感じたら訴訟を行うか否かはさておき、弁護士に相談しておくことは有効な一手と言えるでしょう。
関連コンテンツ:騒音発生主を強制退去させるためにやるべき事、やってはいけないこと

■自身の行った対応や騒音の証拠について記録を残しておく

問題の解決如何に関わらず、行った対応については文書や写真、録音、録画など様々な手段で記録として詳細に残しておくことが推奨されます。対応していく中で問題が解決した場合は次に同様のトラブルが起きた際に対処の参考にできますし、問題が解決していない場合は「自身が具体的にどのような対応を行ったのか」という、今後の行動を決める上での客観的な資料にもなります。加えて、真摯にトラブルへ対応したという証拠を残すこともできます。また、騒音がどの程度のものであるかを客観的な資料として残すため、発生していた騒音について録音や測定を行い、騒音の証拠資料を集めておくことも重要と言えるでしょう(問題解決に向けて議論を行う必要が出てきた場合に非常に有効です)。

自身で対処することが難しいと感じたら

騒音トラブルにおける注意喚起の文書作成や騒音の証拠資料集めは、一般の方がノウハウの無い状態から始めると非常に難しいと言わざるを得ません。もしそれらを作成・収集せざるを得ない状況になった際、また、ご自身での対応が難しいと感じた際は当社までお気軽にご相談ください(>>お問い合わせはこちらから)。

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