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騒音問題・騒音トラブルの解決が難しい5つの理由

騒音問題・騒音トラブルの解決が難しい5つの理由

一口に生活騒音問題といってもその内容は本当に多種多様であり、一くくりにすることは難しいが、多くの場合騒音問題の解決には、精神的、時間的、費用的に多くのコストを必要とし、その解決は簡単ではない。ここではまず初めに、「何が騒音問題解決を難しくしているか」、「何が問題解決の障壁」になっているのかを項目に分けて論じていく。

生活騒音問題解決の障壁

1)目に見えず、証拠の残らない問題である

いうまでもなく、音は目視ができず、このことが問題解決を難しくしている。たとえば交通事故であれば、破損した車両等「目に見える証拠」が「自動的に」生成され、これを見れば誰から見ても事故の存在は明らかである。一方騒音問題では発生している音は目視できない上、発生した音は直ちに消えるため証拠も残らない。証拠が無いことが発生源と被害者の話し合いを難しくしており、同じように仲裁を第3者に依頼することも難しくしている。
この問題を解決するためには、目に見える定量的なデータを入手すること、つまり騒音計などによる測定・ロギング(測定値の記録)を実施し、音を目に見える状態にしてから話し合いを行うことが望ましい。

2)人によって感じ方が異なる

第二に音の感じ方が人によって異なることが挙げられる。同じ音を聞いたとして、ある人にとっては心地よくても、別の人にとっては不快であるというケースである。ここでいう「感じ方」は「量的なもの」と「質的なもの」に大別することができる。
「量的なもの」とは同じ大きさの音を感じたとしても、ある人にとっては耐え難いほど大きいと感じることもあれば、他の人にとっては「気にするほどではない」と感じることもあるということである。これは主に感覚器官の特性によるもので、後述するが、特に周波数(音の高さ)ごとの特性は個人差が大きいようである。
また、同じ音の大きさであっても、時間帯によってその受容度が異なる。特に集合住宅においては同じ建物内にさまざまな生活パターンの人が居住しており、たとえばある人にとって23:00は就寝時間だが、ある人にとっては起床時間かもしれない。
「質的なもの」とは「音の高さ(周波数)や内容」を意味する。鳥のさえずりの声が心地よく感じる人がいる一方で、やかましくてリラックスできないという人もいるように、同じ音を聞いたとしても、音の質や内容によって快・不快が分かれる。
また、音の内容については子供の声などが顕著であり、自分の子供の声はよほど大きくても耐えることができるが、他人の子供の声は気になるものであり、子供のいない単身世帯にとってはより大きなストレスになる。
たいした音の大きさではなくても、一度気になり始めてしまうと次からは比較的小さな音でも気になってしまうことが誰にでもあるはずである。生活騒音の場合、発生源と被害者の人間関係が悪化すると、通常であればまったく問題の無い音であっても気になってしまい、ストレスの原因となる場合も多い。
このような理由によって騒音問題は当事者間において「うるさい、うるさくない」という感情的・感覚的な水掛け論に陥りやすい。したがって、話し合いの視点を上げるためには、定量的に音の大きさを測定し客観的なデータをもとに話し合いを行うことが必要となることは前述のとおりである。
一方で人によって感じ方が異なるということはその測定値、基準値を超越しているか否かだけに注目してはならない点に注意が必要となる。つまり、基準値を超えていなくとも、不快に感じる人はいるということである。

3) 居住者の権利が強い

受忍限度を超える騒音を発生させ続け、何時までたっても改善しない人為的な発生源がある場合、騒音を発生させている住人を強制的に立ち退き(賃貸の場合は強制退去)させることができないかと画策される方がよくいるが、実際にはほとんどの場合うまくいかない。
日本において不動産の所有権は非常に強い権利であるが、同様にして、「貸主(物件のオーナー)」よりも「居住者」を非常に強く守る法律が整備されている。たとえば家賃を数ヶ月滞納したからといって簡単に立ち退きを迫ることはできないし、契約の更新を拒絶することも理由なしにはできないのである。
つまり「居住し続ける権利」が非常に強力であるため、居住者が騒音を発生させているからといって簡単に「強制的に」退去させることはできず、これが騒音問題の長期化、解決を難しくさせている。

4) 民事トラブルは警察や役所の協力が得られにくい

騒音問題でトラブルになった場合、当事者間だけでは解決が難しく第三者の協力・仲裁が有効となる場合も少なくない。
役所や(特に度を越えていると考えられるとき)警察に相談する場合も少なくないが、同じ機関であっても地域や担当者によって対応してくれる場合としてくれない場合があり、警察は「原則民事不介入」であることを理由に介入してもらえないことも多いようである。
また、介入の前提として実際に騒音の証拠が必要と言われる場合もあり、この場合は定量的なデータの測定が役に立つ。なお、騒音の測定データのほかに、警察や行政機関に介入してもらう場合には、もし騒音の結果不眠などの健康被害につながっているとすれば、これを証明する診断書などが有効になる場合がある。

5) 生活騒音の規制は難しい

事業者の活動については、基準値を超えていれば法律や条令を根拠に行政から活動を制限、指導することができるが、多くの自治体において生活騒音については規制が明確にはなっておらず、その指導についても難しいのが現実である。
たとえば武蔵野市役所のホームページには以下のように記載されている1)。
”事業活動や生産活動に伴って発生し、法や条例に定められた明らかに生活に影響を及ぼす騒音については、規制の対象となっています。
一方、日常の生活行動や家庭に普及している電気・ガス機器、ピアノ・ステレオなどの音響機器などから発生する、いわゆる生活騒音は、人が活動することに伴って発生するものであり、これを法律や条例で規制することは日常生活に制限を加えることになって、一律的な規制にはなじみにくいものといえます。“
ただ生活騒音に関する明確な基準値は無いものの、実際の民事訴訟などにおいては受忍限度を判断するためのよりどころとして環境基準が使用されているケースも少なくなく、まったく参考になる基準値が無いわけではない。


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