環境音のマスキング効果による騒音対策
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騒音対策のひとつに、「発生している騒音と周波数が近い音」を発生させて不快な騒音の影響を小さくする、マスキング効果を利用する方法があります。本ページでは環境音を利用したマスキング効果による騒音対策の事例と活用方法をご紹介します。
そもそも環境音・マスキング効果とは何か?
環境音とは何か
環境音とは、街の喧騒や自然の音など、特定の音声や音楽以外の日常的な周囲の環境が発している音のことをいいます(雨や風、川の流れや波の音、火のはぜる音など)。話し声などと比較すると、ヒトは環境音に対して意識が向きにくく、不快に感じることが少ないことが特徴です。適度な環境音は、無音の状態よりも人間の集中力を高める効果も確認されています。このような特徴により、環境音は騒音対策に活用されることがあります。
マスキング効果とは何か
二つの音が重なったとき、片方がかき消されて鳴っているのに聞こえないという現象が起こります。これをマスキング効果といいます。マスキング効果は、周波数が近ければ大きくなり、周波数が低い方が、他方の音をマスクする効果が大きくなります。これらの特徴は、騒音対策にも用いられています。特定の音(騒音)が気になる場合に、別の音を発生させてカモフラージュさせるのです。
マスキング目的で環境音を利用するメリット
マスキング効果を期待する場合、気になる音(騒音)に合わせて、新たな別の音を発生させますが、マスクを目的として発生させる環境音が新たな騒音となる可能性があります。したがって発生させる環境音の設計が重要です。適切な環境音であれば、ある程度の大きさで鳴っていてもほとんど不快に感じることはありません。
ただし、心地よいと感じる環境音は個人によって異なります。川のせせらぎなどの自然音を好む人もいれば、街中の雑踏を好む人もいるという点に留意しておくことが必要です。通常大きな突発的な騒音よりも、小さく持続して聞こえる環境音が、騒音対策には適しています。
「マスキング効果」はどのような場所で使われているか
騒音対策として、数多くのビジネスシーンでマスキング効果を利用したシステムが導入されています。マスキング効果が必要とされ活用されているのは、次のような環境です。
外部の騒音が気になる環境
外部から聞こえてくる騒音を、マスキング効果によって軽減します。ホテルの客室など、他人の出す生活音が気になる環境で効果を発揮します。
プライバシー保護が必要な環境
主に会話などの音を、内容が聞き取れないように他の音でマスキングして、外部への流出を防ぎます。顧客のプライバシー保護が必要な、金融業や病院などで活用されることが多いようです。マスキング音によって、聞かれては困ることを話していても、ただの音としてしか認識されなくなります。このほか企業内で、会議の内容が外に聞こえないようにするセキュリティ対策の目的でも利用されています。
マスキングシステムのしくみ
実際の利用シーンでは、主に空調音や攪乱音などの音声を流しながら音場を整えることによって、高いマスキング効果を設計しています。環境音を適切に設計することによって、マスキング効果を上げ、妨害音が感じられにくくなっています。もっとも身近なシーンでいえば、飲食店のBGMなどもマスキング効果を狙ったものです。
フリーで使える環境音で騒音対策をためしてみる
環境音を用いれば、大きな音ではないが聞こえると気になる生活音のような騒音の不快感を軽減させることができます。また、環境音は仮に漏れ聞こえても他人に不快感を与えにくいという特徴も、騒音対策に適している理由のひとつです。
音楽やテレビの音でもある程度のマスキングは可能です。しかし、内容(意味)のある音であるため、気を取られてしまうこともあり、必ずしも騒音対策に向いているとは言えません。一方、環境音はそれ自体が意味を持たないうえ、一定であるためその存在を意識することがありません。近年では、リラックス効果があるといわれる1/fのゆらぎを有する環境音が睡眠のために利用されるケースも多いようで、多くの動画が動画サイトにアップされています。
インターネットの環境音サイトの活用
個人の場合、特別なシステムを使わずどのようにして環境音を流すことができるかというと、フリーで公開されている環境音を利用するという方法があります。
環境音は、川や水の音などの自然音からカフェにいるときに聞こえてくるような音まで、さまざまな種類のものがインターネット上に公開されています。一部は利用に会員登録が必要ですが、BGMとして使えるように長めの音声が再生でき、時間の設定も可能です。スマートフォンのアプリとなっているものもあります。
インターネットサイトを利用した環境音を使った騒音対策は、特に設備や費用も必要としません。また、トラブルの原因となりやすい、騒音発生源への注意も不要です。周囲から聞こえてくる生活音が気になる場合には、気軽に活用してみるとよいでしょう。
マスキング効果でどうにもならない騒音について
上記で紹介・説明しているマスキング効果は「それ程音量が大きくはないが気になる音」への利用・対策には期待できますが、その一方で「過剰な音量の騒音」や「断続的で突発的な騒音」に対してはあまり効果的とはいえません。というのも、流している環境音が過剰な音量になれば逆にストレスになりますし、流している環境音を突発的に超えるような音に対しては効果が薄いことになるからです(例えば、大音量で環境音が流れるカフェでリラックスすることは難しく、上階がジムのオフィスでは時折環境音を超える衝撃音から集中が妨げられる、といった具合です)。したがって、マスキング効果の利用は過剰な騒音に対する根本的な解決方法にはなり得ない点に注意すべきといえます。もし過剰な騒音に対する根本的な解決方法を模索されている場合は、下記関連コンテンツのページを閲覧していただくことをお奨めいたします。
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【著者情報/略歴】2014年より日本騒音調査カスタマーサービス部門、HP記事担当。年間1,000件を超える騒音関連のお問い合わせに、日々対応させていただいています。当HPでは、騒音に関してお客様から、よくいただくご質問とその回答を一般化して紹介したり、当社の研究成果や学会(日本騒音制御工学会等)に寄稿した技術論文記事をかみ砕いて説明させていただいたり、はたまた騒音関連のニュースを解説させていただいたりしています。
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