ペット可マンションならうるさくても平気?ペットによる騒音と対策について
日本ではペットとの共同生活が可能なマンションの割合が年々増加する傾向にあります。特に近年新築されるマンションは、賃貸物件でおよそ10~20%、分譲物件で90%以上がペット可の物件です。これらの物件にはペット用の専用設備が備わっているものもあり、現在では昔よりもずっとペットと快適に暮らせる環境が整ってきていると言えるでしょう。ただ、利便性が高まる一方で、昔は発生しなかった様々な問題が発生する傾向も高くなっています。特に大きな問題になりやすいのが鳴き声や足音による騒音です。ペット可マンションであればペットによる音は誰も気にしない、という訳ではなく、長時間続く鳴き声や大きな足音は隣人や上下階の住民に対してはストレスの要因ともなり、ひいてはトラブルの原因になりかねません。このページでは、ペット可物件の騒音の原因と対策についてまとめています。
ペットの鳴き声の原因と対策について
ペット可マンションで騒音問題になりやすいものとして一番に挙げられるのはペットの鳴き声です。適切な対策を行うことで改善可能な場合もありますが、改善のためには必要以上に鳴いてしまう原因をよく理解し、各原因に合った対策方法をとることが大切です(間違った対策方法は飼い主・ペット双方のストレス要因になる可能性があるためです)。病気や怪我を除いた場合、ペットが鳴く大きな原因と対策としては次の3つが挙げられます。
①飼い主不在の不安やストレスによる鳴き声
飼い主が自身から離れていてその場にいないとき、ペットの性格によっては強い不安や大きなストレスを感じることがあります。特に人間の幼児にもみられる「分離不安症※」と呼ばれる症状は犬など知性の高いペットに発症することがあり、飼い主の留守中に過度な鳴き声を発する原因になります。
※生後6か月~3歳頃の人間の児童に一般的にみられる「愛着のある人物や場所から離れることに対し不安を感じる様子」を指し、一般に病状とはみなされない。
飼い主不在の不安やストレスへの対策
根本的な対策としては飼い主が常にそばにいてあげることですが、家族構成や職種によっては不可能です。根本的な解決が不可能な場合、「飼い主がいない状況に慣れさせる」「環境的なストレスを軽減する」「飼い主が在宅しているときは運動をさせる」ことが対策方法として挙げられます。飼い主が不在の状況に慣れる練習をすることで、留守番の際に不安に感じることが少なくなる場合もありますし、外からの音が聞こえにくい環境であればストレスが軽減されるため鳴く頻度が減るかもしれません。また、在宅時にたくさん遊んであげることや散歩につれていくことでストレスの解消や疲労感により鳴く頻度を減らせる可能性があります。
②要求行動による鳴き声
オウムなどを除き大部分のペットはしゃべれませんが、「空腹」、「散歩したい」、「遊びたい」など、何か要求があることをアピールして大きな声で鳴くことがあります。これを要求行動といい、放置し続けると習慣化する場合があります。
要求行動への対策
要求行動の基本的な対策には「要求の無視」、「コマンドトレーニング」があります。まず要求の無視ですが、単に無視し続ける、という訳ではありません。ペットの不適切な要求行動を無視し、適切な行動を褒めることで望ましい行動を刷り込む方法を指します。例えば、散歩を要求して吠える場合には叱るのではなく無視し、おとなしくしていたら褒めて(撫でて)あげる、などが挙げられます。次に、コマンドトレーニングは「お座り」「伏せ」「待て」などの指示(コマンド)を繰り返し与え、ペットが指示通りできたら褒めるトレーニングです。コマンドトレーニングは一見して要求行動の抑止につながらないように感じるかもしれませんが、根気よく続ければ要求行動を行う前のペットに指示を行うことで要求行動を止められるようになる場合があります。なお、これらの対応は飼い主もペットも大なり小なりストレスを感じることになるため、両者のストレスについて注意を払いつつバランスよく続けることが大切です。また、ペットのトレーニング施設(しつけ教室など)もあるので状況が改善されない場合は相談・利用してみても良いかもしれませんが、しつけ教室は一般に安価ではないため、事前に比較・検討されることをお奨めします。
③外部の刺激による鳴き声
ペットは一般には成人ほどの知能を持つことがありません。このため自身が住んでいる場所の外を車や人が通るだけで、危険がないことを理解できず怖くて鳴いてしまうことがあります。特に警戒心が強い場合は雨音や風など自然による音にも反応してしまう場合があるため、頻繁に鳴いてしまうことになります。
外部の刺激への対策
根本的な対策として挙げられるのは引っ越しですが、一般に引っ越しは簡単なことではありません。次点の対策としては雨戸やシャッター、カーテンを閉めておくことが挙げられます。ただ、全ての窓を閉め切ってしまうことはストレスの原因になりかねませんので、なるべく車道や人通りが多い窓は常時カーテンを閉めておき、天気予報が雷雨の際は全ての雨戸やシャッターを閉めておくなど、状況を判断しつつ対策を行っていくとよいでしょう。
ペットが移動する際の足音とその対策について
ペットの足音は硬いものの上に飛び降りる、歩く、走る、などの状況で発生し、特にフローリングの床に対して体重の重いペットが飛び降りたり走ったりすると相当の衝撃音が出ることがあります。この衝撃音の対策として、高い効果が期待できるのは防音工事を行うこと、または防音マットを敷くことです。ただ、ペットのために床の工事を行うのは一般の家庭では敷居が高いと考えられるため、現実的には防音マットによる対策が最も効果的かつ経済的となります。材質によりますが、マットは基本的に厚さが厚い程より効果が高くなる傾向があるので、ペットが遊ぶ範囲になるべく厚めのマットを敷くことがお奨めです。また、窓から外に音が漏れることを防ぎたい場合は窓を二重ガラスにする、カーテンを防音のものに変える、などの対策があります。
上下階や隣のペットによる騒音が気になったら
一般的な騒音苦情(ペットによるものでない騒音苦情)であれば当事者どうしの話し合いによる解決方法が望まれますが、ペットによる騒音の場合はマンションのルールに従っているのか、という部分にも焦点があてられます。すぐに苦情を伝えに行くのは避け、まずはマンションの管理組合や管理会社に相談し、対応してもらえないか交渉してみることが対応として望ましいと考えられます。例えば、管理組合が共有の掲示板に注意文を掲載することで騒音は発生しなくなるかもしれません。
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いわれのない騒音の苦情を入れられたら
マンションでは部屋で発生した音がそのまま隣や真下の部屋に伝わるとは限りません。斜め下や斜め上などに伝わることもあります。つまり、自身のペットによるものではない騒音に対して冤罪※的に騒音の苦情が入れられるケースもあり得ます。もしご自身が明らかに潔白であるのにも関わらず騒音の苦情が入った場合は必ず管理組合または管理会社に相談しましょう(協力・非協力問わず第三者として間に入ってもらうことでトラブルの拡大が抑えられる場合があります)。
※冤罪(えんざい):無実であるのに犯罪者として扱われること
騒音の調査が必要になったら
「隣の家のペットの騒音が気になる」「自身のペットがうるさくないか心配」「理事会で騒音の調査を行うことが決まった」など、皆様理由は様々ですが、当社はペット関連の騒音調査のお問い合わせ・ご依頼を多々いただいております。騒音の客観的な評価(数値としての評価)が必要になった際、また、環境的に住みよい環境が保たれているかご不安に思われた際はお気軽にご相談ください。>>お問い合わせはこちらから

【著者情報/略歴】2014年より日本騒音調査カスタマーサービス部門、HP記事担当。年間1,000件を超える騒音関連のお問い合わせに、日々対応させていただいています。当HPでは、騒音に関してお客様から、よくいただくご質問とその回答を一般化して紹介したり、当社の研究成果や学会(日本騒音制御工学会等)に寄稿した技術論文記事をかみ砕いて説明させていただいたり、はたまた騒音関連のニュースを解説させていただいたりしています。
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