羽田新ルート騒音について[日本の航空機環境基準とWHO騒音ガイドライン]
羽田空港を利用する航空機の新ルートが運用開始される予定となっており、連日ルート付近の住宅への騒音に関する影響の大きさや、今後実施される騒音対策などについて報道されています。騒音対策を実施するに当たっては、原則的には「規制値や基準値」に照らし合わせてこれを下回る値になるように運用方法や対策が検討されます。具体的には低騒音航空機の導入や、着陸料(騒音が低ければ利用料金も安い)、運用高度などの対策が検討されているようです。
日本における環境基準における航空機騒音にかかわる基準
日本における航空機に関する基準値の代表的なものとして環境基準が「生活環境を保全し、人の健康の保護に資するうえで維持することが望ましい航空機騒音に係る基準」下記のとおりとなっています。
「専ら住居の用に供される地域」では57db(デシベル)以下
「上記以外の地域で通常の生活を保全する必要がある地域」では62db(デシベル)以下
・なお測定方法については、「原則として連続7日間行い、騒音レベルの最大値が暗騒音より10デシベル以上大きい航空機騒音について、単発騒音暴露レベル(LAE)を計測する。なお、単発騒音暴露レベルの求め方については、日本工業規格 Z 8731に従うものとする。」とされています。さらに測定値の評価方法についても、さまざまなルールが規定されていますが、ここでは割愛します。
WHOにおける航空機騒音に関する推奨値
2018年にアップデートされたWHOの「Environmental Noise Guidelines」では、『健康を守るため』の航空機騒音に関する推奨値として45db Lden(夜間においてはさらに低い40db Lden)が強く推奨されています。
いずれの基準値・規制値も、万人にとって問題ない水準ではない。
今回挙げた二つの基準値以外にもさまざまな基準値が存在しますが、重要であるのはいずれの規制値や基準値も「一定割合の人にとって問題となるかどうか」を実験・検討した上で決定されているものであり、この基準値を満たしていればすべての人が不快にならないという水準を示すものではないということです。
一方で規制値を厳しくしすぎれば、利用者の快適性や経済性にとってはネガティブに働くため、これらのバランスをどうとるのかが論点となるのでしょう。今回の施策に伴って、経済性と、住民の快適性がどのようにバランスがとられるのか、注視していきたいと考えています。
■その他参考となるガイドライン値

【著者情報/略歴】2014年より日本騒音調査カスタマーサービス部門、HP記事担当。年間1,000件を超える騒音関連のお問い合わせに、日々対応させていただいています。当HPでは、騒音に関してお客様から、よくいただくご質問とその回答を一般化して紹介したり、当社の研究成果や学会(日本騒音制御工学会等)に寄稿した技術論文記事をかみ砕いて説明させていただいたり、はたまた騒音関連のニュースを解説させていただいたりしています。
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