解体工事の騒音と振動によるうつ病の悪化と自宅の損傷に損害賠償請求が認められた事例(詳細版)

【事件分類】損害賠償請求事件
【判決日付】平成19年7月27日

主文

1 被告らは,原告に対し,連帯して136万8157円及びこれに対する平成17年
11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告の負担とし,その余を被告らの負担とす
る。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求
被告らは,原告に対し,連帯して411万8157円及びこれに対する平成17年
11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告株式会社Y1(以下「被告Y1」という。)が被告Y2株式
会社(以下「被告Y2」という。)に発注し同被告が施工した建物解体工事に伴う騒音・
振動により,うつ病等が悪化し,不安・不眠の症状が出たほか,自宅建物に損傷が発生す
る被害を受けたと主張し,被告らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償として411万
8157円及びこれに対する不法行為の後である平成17年11月21日(原告が被告ら
に催告をした日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払
を求めている事案である。
1 前提となる事実(括弧内に証拠等を記載した事実以外は争いがない。)
(1)原告は,株式会社A(以下「A」という。)から,平成16年4月26日,同会
社が同年2月5日に新築した東京都立川市(以下略)所在の別紙物件目録記載1の木造ス
レート葺2階建居宅建物(以下「原告建物」という。)をその敷地とともに購入し,以後,
同建物に居住している。
(2)被告Y1は,平成16年11月5日,東京都立川市(以下略)所在の別紙物件目
録記載2の土地を取得し,被告Y2に,同土地上の同目録記載3及び4の建物の解体工事
(以下「本件工事」という。)を発注し,同被告は,同年12月13日から同17年3月
24日にかけて本件工事を施工した(甲4,甲6,甲7,乙4)。
(3)本件工事現場と原告建物との位置関係は,別紙現場見取図のとおりであり(原告
建物は「原告建物」と表示した斜線上にあり,別紙物件目録記載3の建物は「遊とぴあ」
と表示した建物で,同目録記載4の建物は「(株)B」と表示した建物及びこれに近接す
る2棟の附属建物。),立川通りを挟んで直線距離で約55mの距離にある(甲8,甲2
6,弁論の全趣旨)。
(4)原告は,会社にプロダクトマネージャーとして勤務していたが,同会社の産業医
から精神科を受診するよう勧められ,平成17年1月31日,東京医科歯科大学医学部付
属病院に受診したところ,ストレスによる抑うつ状態,うつ病と診断され,同年2月15
日から休職に入り,自宅療養を続けていた(甲9,甲30,原告本人)。
2 争点及びこれについての当事者の主張
(1)被告らの責任原因
ア 振動による原告建物の損傷の発生
(原告の主張)
本件工事により激しい振動が発生し,これにより,原告建物に,外壁の亀裂,
リビングルームのサッシの歪み,リビングルーム及び洗面所のドア枠の湾曲,ユニットバ
スの歪み,クロスの浮き及び皺等の損傷が発生した。
(被告らの主張)
本件工事は,建物の解体工事であり,ある程度の振動が発生したことは事実で
ある。
しかし,本件工事現場と原告建物との間には立川市交通網の中心的な道路であ
る立川通りがあり,この道路を走行する車両により周辺の地盤に日常的に発生していた振
動が原告建物に損傷を与えた可能性を否定できない。
また,平成16年3月から同年12月まで,原告建物と北側の細い通りを隔て
た向かいにおいて,既存建物解体工事とマンション「M***町」の建築工事(以下,同
マンションを「M」といい,各工事を併せて「M工事」という。)が行われたが,工事の
規模と位置関係からして,同工事が原告建物に損傷を与えた可能性も否定し難い。
イ 騒音・振動による原告の病気の悪化等
(原告の主張)
(ア)本件工事は,廃棄物発生見込量が3200トンにも及ぶ大規模なものであり,
自宅である原告建物で静養していた原告は,平成17年2月21日ころから同年3月11
日ころまでの間,日曜日を除く毎日,午前8時30分ころから午後5時30分ころまで,
大型重機を使用した土間基礎解体工事等により,激しい騒音と振動を感じた。
(イ)特定建設作業の場合,振動の規制基準値は75dB,騒音の規制基準値は8
5dBとされているが,建物が揺れるときの振動の値は80dBであるところ,本件工事
については,周辺住民から建物が揺れるという苦情が寄せられていたから,本件工事によ
る振動が上記の規制基準値を超えていたことは明らかである。また,原告は,原告建物の
中でさえテレビの音が聞こえないほどの騒音被害を受けたが,80dBが窓を開けたとき
の地下鉄の車内,90dBが騒々しい工場・ピアノ程度の音量であるとされているから,
本件工事による騒音が上記の規制基準値を超えていたことも明らかである。
(ウ)被告らは,周辺住民から本件工事による騒音・振動が激しいとの苦情を繰り
返し受け,軽減策を講じるよう求められていたにもかかわらず,これを無視して同工事を
続行した。
(エ)以上のとおり,本件工事による騒音・振動の程度は,規制基準値を超えてお
り,受忍限度を超えていたことは明らかであり,原告は,これによるストレスが原因でう
つ病の症状が悪化し,不安・不眠の症状が出た。
(被告らの主張)
被告Y2は,本件工事の近隣への影響を抑えるため,作業の進行に伴い,工事
の方法,使用重機の種類及び台数を調整するなどし,騒音・振動の程度をできるだけ低く
保つよう十分な配慮をした。例えば,本件工事現場の近隣住民から騒音・振動について苦
情を受けたときには,速やかに,使用重機を,ブレーカーから音が出ず振動の少ない圧砕
機に変更したり,解体したコンクリート塊等を更に人頭大に砕く小割作業の場所を変更す
るなどした。
その結果,本件工事の騒音・振動が規制基準値を超えたことはなく,直近の住
民はともかく,周辺部の住民からは,原告以外からは苦情の申出を受けたことはなかった。
以上のとおり,本件工事による騒音・振動は,受忍限度を超える違法なもので
はなかった。
ウ 被告らの過失
(原告の主張)
(ア)被告Y2の過失
本件工事を請け負った被告Y2は,これを施工するにあたり,第三者に損害
を与えないようにすべき注意義務があったにもかかわらず,前記のとおり,周辺住民から
本件工事による騒音・振動について繰り返し苦情を受けながら,これを無視して工事を続
行したものであり,上記の注意義務を尽くさなかったことは明らかである。
(イ)被告Y1の過失
本件工事の注文者である被告Y1は,建築関係について専門性を有する会社
である。
また,原告建物の周辺の土地は,台地の中で最も低く,地盤の主たる土質は
粘性土であり,また,全体的に表層から1m程度の盛土が行われていることもあって,軟
弱地盤であった。これは,周知の事実であり,被告Y1も知っていたものであり,仮に知
らなかったとすれば,調査しなかったこと自体に過失があったというべきである。
しかも,原告建物のみならず,その周辺の建物においても被害が多発してお
り,この事実は,本件工事の周辺建物に及ぼす危険性が極めて大きかったことを示してい
る。
したがって,被告Y1は,本件工事の騒音・振動により原告建物に危険が及
ぶことを容易に認識できたはずであり,被告Y2に対し,本件工事の方法や仕様において
危険防止の措置をとるよう指示すべき義務があった。
しかるに,被告Y1は,この義務を怠り,被告Y2に対して上記の指示をせ
ず,その結果,原告に損害を与えたものであり,注文又は指図に過失があったというべき
である。したがって,被告Y1には,原告に対する不法行為責任がある。
(被告Y2の主張)
前記のとおり,被告Y2は,本件工事による騒音・振動の程度をできるだけ低
く保つよう十分な配慮をしていたものであり,原告が主張するような過失はなかった。
(被告Y1の主張)
被告Y1に責任があるとする原告の主張は争う。
(2)損害
(原告の主張)
ア 建物修繕費                 74万8157円
原告は,原告建物の損傷の修繕のため,工事代金として74万8157円を要
した。
イ 慰謝料                      300万円
原告は,うつ病の悪化や不安・不眠の症状により休職(自宅療養)が長期に及
び,失職の危機にさらされている。
原告が受けた精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料の額は,休業補償的要素に加
え,被告らの不当な対応,応訴態度をも斟酌して定められるべきであり,300万円を下
ることはない。
ウ 弁護士費用                     37万円
原告は,原告訴訟代理人に本件訴訟の提起及び追行を委任し,手数料及び報酬
として原告の損害額の約1割に相当する37万円の支払を約した。
(被告らの主張)
ア 損害に関する原告の主張は争う。
イ 原告は,Aに,原告建物の損傷の修繕を依頼し,修繕が完了した。原告は,A
との間で,原告の被告らに対する損害賠償請求が認容されその支払を受けたときはこれを
Aに支払うという合意をしている。したがって,原告がAに原告建物の修繕費について債
務を負担しているとはいえず,原告には,この修繕費分の損害はない。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)ア(振動による原告建物の損傷の発生)について
(1)前提事実,証拠(甲8ないし甲11,甲15,甲16,甲25,甲26,甲30,
甲32,甲33,甲36,甲38,甲39の1ないし3,甲40の1,2,甲42ないし
甲45,乙4,証人C,同D,同E,同F,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の
事実が認められる。
ア 本件工事は,別紙物件目録記載3の建物(以下「本件遊技場建物」という。)
及び同目録記載4の建物(以下「本件建物」という。)の解体工事であったところ,本件
建物は,附属建物である倉庫を含め,軽量鉄骨造の比較的簡易な構造であったものの,本
件遊技場建物は,重量鉄骨造の3階建の建物であり,本件工事の外装材・上部構造部分及
び基礎・基礎ぐいの取壊等により発生するコンクリート塊の廃棄物の量は,計画段階にお
いて2797トンと見込まれていた。
被告Y2は,平成16年12月13日から同17年3月24日にかけて本件工
事を施工し,このうち,同年2月17日ころからは,両建物の基礎部分の解体工事が行わ
れたが,この工事には,ブレーカーや圧砕機といった重機が使用され,解体によって生じ
たコンクリート塊等を更に人頭大に砕く小割作業も行われた。
イ 原告建物は,本件工事現場から直線距離で約55m,本件遊技場建物からは約
76mの位置にあったが,原告は,原告建物内において,同年2月21日から同年3月1
1日ころまでの間,日曜日を除いて午前8時30分ころから昼の休憩時間を挟んで午後5
時ころまで,断続的な騒音・振動を感じ,原告建物では,振動により,部屋の中の物が揺
れ,食器棚が揺れて音を立て,工事のある日には壁に掛けている時計が遅れるといった現
象が発生し,原告としては,揺れは,震度3よりも強く感じたこともあった。
ウ 本件工事現場の隣接地に居住していたG(以下「G」という。)の家人は,同
年2月28日,立川市に,本件工事による騒音・振動について苦情を申し立て,同日,同
市の職員が現場に赴き,被告Y2の現場責任者であったH(以下「H」という。)に対し,
近隣に配慮して作業するよう,また,再度本件工事の説明を兼ねて近隣を回るよう指示し
た。
エ 原告は,平成17年3月初めころまでに,原告建物に次の不具合が発生してい
ることに気付いた。
(ア)リビングルームのドアサッシに設けられている2つの鍵のうち下側の鍵の施
錠が困難になった。
(イ)脱衣所の扉のラッチボルトが十分に扉枠に届かず,扉が開きやすくなった。
(ウ)ユニットバスの壁面にビスで留められているプラスチックパネルのうちの2
枚が重なるようにずれた。
オ 原告は,同年3月2日,立川市に,本件工事による騒音・振動について苦情を
申し立て,同月3日,同市の職員は,原告建物に赴いて原告から事情を聞いた上,Hに,
気を遣って作業を行うように伝えた。
また,原告は,同日ころ,本件工事の窓口となっていた株式会社Iに対しても,
本件工事による騒音・振動を抑えてほしい旨の申入れをし,翌日原告宅を訪れたHに対し,
サッシやドア枠の不具合を指摘した。
カ 原告は,同年3月31日ころ,原告建物の外壁にひび割れが発生し,室内のク
ロスに皺が発生していることに気付いた。
キ 本件工事の騒音・振動に対しては,原告のほかにも,上記G宅の家人が苦情を
申し入れたほか,本件遊技場建物の南側に隣接するコンビニエンスストアからも本件工事
による振動でアンテナが動いた旨の申入れがあり,また,本件遊技場建物の南側の隣接地
に自宅と賃貸住宅を有するJも苦情を申し入れていた。
ク 原告建物は,Aが分譲した一帯の9棟中の1棟(2号棟)で,1号棟に居住し
ていたE(以下「E」という。)は,本件工事が行われていたころ,騒音や振動で,目が
覚めたこと,テレビの音が聞こえなかったことがあり,ベッドが揺れるような,突き上げ
てくるような揺れを感じたことがあり,同年6月ないし7月ころ,上記建物の外壁にクラ
ックが発生しているのを発見した。
(2)これらの事実によれば,本件工事は,解体した建物の規模や構造からすると,そ
の撤去,殊に本件遊技場建物の基礎部分の撤去工事により相当量の騒音・振動が発生した
ものと考えられ,原告建物においては,部屋の中の物が揺れ,食器棚が揺れて音を立て,
工事のある日には壁に掛けている時計が遅れるといった現象が発生し,原告としては,揺
れは,震度3よりも強く感じていたものであり,本件工事により原告建物に生じていた騒
音・振動の影響も,相当な程度に達していたと認められる。
一方,原告建物は,本件工事現場から直線距離にして55m,本件遊技場建物か
らは76m程度離れているにとどまるところ,原告が原告建物に不具合が生じているのに
気付いた時期は,本件工事が行われている期間中ないし本件工事が終了した直後であるこ
と,原告建物は,平成16年2月5日に建築された新しい建物であり,D作成の建物調査
報告書(甲10)には,原告建物の上屋部分の柱及び壁下地等に解体振動による影響があ
ったと思われる旨記載されていることを併せると,前記(1)で認定した原告建物に生じ
た不具合は,本件工事の振動によるものと推認するのが相当である。
(3)これに対し,被告らは,原告が主張する原告建物に生じた不具合の原因は,立川
通りを走行する自動車等の振動である可能性を否定できないと主張する。
しかしながら,証拠(甲47,甲49ないし甲51)によれば,原告建物及び本
件工事現場の近隣である立川市(以下略)(原告建物から約400m北にある市役所前)
において測定したところによれば,平成17年10月3日から同月4日まで,立川通りか
ら生じる振動の最大振動レベルは,80%レンジ上端値で47dB以下であり,同16年
11月8日から同月9日までの最大振動レベルも同程度であったことが認められ,この程
度の振動により原告建物に前記不具合が生じたものとは認められない。
また,被告らは,原告建物の北側の通りを隔てた向かいにおいて行われたM工事
が原告建物に損傷を与えた可能性を主張するが,証拠(甲28,乙2,乙3)及び弁論の
全趣旨によれば,同工事は,平成16年3月に着工し,同年12月に竣工したことが認め
られ,この工事の時期は,原告建物に不具合が発見された時期とは相違する上,この工事
によって発生した騒音・振動の程度を明らかにする証拠はなく,しかも,M工事が行われ
た後,近くの建物7棟には損傷が発生していないこと(甲52ないし甲55)に照らすと,
被告らの上記主張も採用することができない。
2 争点(1)イ(騒音・振動による原告の病気の悪化等)について
既に認定説示したとおり,平成17年2月17日ころから同年3月11日ころまで
の間,本件工事による騒音・振動が断続的に続き,現に,原告建物には,同工事の振動に
より不具合が生じている。
そして,前提事実と証拠(甲9,甲12,甲30,原告本人)によれば,原告は,
平成17年1月31日,東京医科歯科大学医学部付属病院においてうつ病と診断され,同
年2月15日から休職に入り,以後,自宅療養を続けていたところ,本件工事の騒音・振
動により強いストレスを感じ,同年3月上旬ないし中旬ころから,不眠の症状が出現した
ことが認められ,証拠(甲12,甲13)によれば,東京医科歯科大学医学部付属病院K
医師の作成に係る同年4月26日付の診断書には,原告について,同年3月中旬ころから,
環境変化によるストレス(工事の騒音)が原因で症状悪化,不安,不眠が出現し,同年3
月30日から眠剤マイスリを,同年4月8日から抗うつ薬パキシルを追加した旨記載され
ており,また,同病院L医師作成に係る平成18年1月26日付の診断書にも,原告につ
いて,うつ病,身体表現性障害として,平成17年2,3月の環境変化によるストレスか
ら症状が悪化した旨記載されていることが認められる。
これらの事実及び証拠を併せると,本件工事による騒音・振動は,原告のうつ病の
症状の悪化に影響を与えたものと認められる。
3 争点(1)エ(被告らの過失)
(1)被告Y2の過失
既に認定した事実によれば,被告Y2は,本件工事により振動が生じていたこと
を認識しながら,原告を含む近隣に被害が発生することを防ぐ措置を講じなかったことが
認められ,同被告には,原告に前記の被害を発生させたことに過失があったと認められる。
(2)被告Y1の過失
被告Y1は,土木建築工事の企画,設計,施工,監理及び請負を目的の一つとす
る会社であるところ(弁論の全趣旨),本件工事は,騒音や振動の発生し得る重量鉄骨造
の建物の解体工事を含むものであり,同被告は,工事の注文者として,その工事内容につ
いては,認識していたと認められるから,同被告は,近隣住民に,本件工事の騒音・振動
による被害が及ばないように請負人である被告Y2に指示すべき注意義務があったという
べきところ,被告Y1は,これを怠り,本件解体工事により原告に前記認定の被害を及ぼ
したものであり,被告Y2に対する注文又は指図に過失があったと認められる。
そして,これまでに認定説示したところによれば,被告らは,本件工事により原
告に生じた損害については,共同不法行為者として責任を負うというべきである。
4 争点(2)(損害)について
(1)建物修繕費
証拠(甲25,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,前記認定の原告建物に生じ
た不具合は,Aが業者によって修繕をしたこと,その工事代金額は合計74万8157円
であることが認められる。
この点につき,被告Y2は,原告とAとの間の合意を理由に,原告がAに上記修
繕費相当額の債務を負担していないと主張している。
しかしながら,証拠(甲37,証人C)によれば,原告は,Aとの間で,本件訴
訟により賠償された原告建物の修繕代金は全額Aに支払うことに合意していることが認め
られ,既に認定したところによれば,上記修繕代金については,被告らに,原告に対する
賠償義務があることになるから,原告は,Aに対し,上記修繕代金債務を負担しているこ
とになる。
したがって,被告Y2の上記主張は採用することができない。
(2)慰謝料
前記認定の本件工事による騒音・振動の程度及びその継続期間,原告の受けた被
害の内容その他本件に現れた諸事情にかんがみると,本件工事の騒音・振動により原告が
受けた健康被害に対する慰謝料の額は50万円が相当というべきである。
(3)弁護士費用
原告が本訴の提起及び遂行を原告訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著で
あり,本件事案の内容,審理の経過,上記認容額等に照らすと,被告らの不法行為と相当
因果関係を有する弁護士費用分の損害は12万円が相当と認める。
第4 結論
以上によれば,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し,
被告らに対するその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第4部
裁判長裁判官  端 二三彦
裁判官  大島淳司
裁判官  小嶋順平

(別紙)
物件目録
1 所在   立川市(以下略)
家屋番号 ○○番○
種類   居宅
構造   木造スレート葺2階建
床面積    1階   52.17平方メートル
2階   47.20平方メートル
2 所在   立川市(以下略)
地番   ○番○
地目   宅地
地積   3862.22平方メートル
3 所在   立川市(以下略)
家屋番号 ○番○の○
種類   遊技場・駐車場
構造   鉄骨造陸屋根3階建
床面積    1階  979.74平方メートル
2階 1046.40平方メートル
3階 1001.40平方メートル
4(主たる建物の表示)
所在   立川市(以下略)
家屋番号 ○番○の○
種類   店舗・事務所・作業所・倉庫
構造   鉄骨造亜鉛メッキ鋼板ステンレス鋼板葺2階建
床面積    1階  457.32平方メートル
2階  431.44平方メートル
(附属建物の表示)
符号   1
種類   倉庫
構造   鉄骨造スレート葺2階建
床面積    1階  199.45平方メートル
2階  192.61平方メートル
符号   2
種類   倉庫
構造   軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
床面積    46.23平方メートル
以上

低周波音とは
法人・事業所・各種団体様
騒音訴訟と判例 騒音トラブル事件簿

リンク

リンク

問い合わせリンク