周波数別の音圧レベルと騒音レベルの関係とその測定・評価について

周波数によって聞こえ方が異なる?

人間の目は光の波長によって感度が異なります(同じ光の強さであれば黄色や緑色が見やすい)。実は音についても光と同じように、人間の耳は周波数ごとに異なる特性を有しています。数は1,000Hzを基準として「各周波数の音が何dbで同じ大きさに聞こえるか」をグラフにしたものです(等ラウドネス曲線)。

等ラウドネス曲線

値が小さいほど「良く聞こえる周波数である」ということを示しており、最も値が小さい、つまり最も良く聞こえる周波数は「4000Hz程度」であることが分かります。尚、可聴域は年齢とともに狭まるといわれており、特に高周波数(高い音)については加齢とともに聞こえなくなっていく傾向があります。この特性から高周波音であるモスキート音は高齢者には聞こえず、若者には聞こえやすい音となるわけです。尚、音圧レベルが130dbを超えると痛覚の様な感覚で認識され、聴覚に悪影響を与えると言われています。

低周波音は高齢ほど聞こえやすくなる?

一般的に、年齢を重ねると聴力は高音域から徐々に低下します。しかしその一方で、「以前は気にならなかった低い音が、かえって耳につくようになった」という現象が報告されることがあります。これは聴覚における「マスキング効果」という現象で説明することが可能です。

マスキング効果とは

マスキング効果とは、ある音(マスカー)によって、別の音(マスキー)が聞こえにくくなる現象を指します。私たちの生活環境には、空調音や電子機器の動作音、屋外の喧騒など、様々な音(環境音)が存在しており、その多くは中音域から高音域の成分を含んでいます。これらの環境音がマスカーとなり、特定の低周波音を無意識下で聞こえにくくしているのです。

加齢により高音域の聴力が低下(加齢性難聴)すると、これまでマスカーとして機能していた環境音が十分に聞こえなくなります。その結果、マスキングされていた低周波音が相対的に聞き取りやすくなる、というメカニズムです。これは、低周波音に対する聴覚感度が向上したわけではなく、むしろ他の音が聞こえなくなったために、特定の音が際立って感じられる状態と言えます。

騒音測定・評価における注意点

この聴覚の特性は、騒音を評価する上で重要な観点となります。人間の聴感特性を考慮した騒音レベル(dBA)は、多くの状況で有効な指標ですが、上記のようなケースでは、本人が感じている不快感と測定値が乖離することがあります。

なぜなら、騒音レベル(dBA)は、多くの人が聞き取りにくいとされる低周波音や高周波音の評価が低くなるように設計されているためです。

したがって、体感と測定値に差がある場合や、低周波音が問題となっている可能性がある場合は、周波数ごとの物理的な音の大きさ(音圧レベル:dB)を分析し、客観的に音の成分を把握することが有効なアプローチとなります。

dBA(騒音レベル)とは

dBA(デシベルA)とは、人間の聴感特性を考慮して補正された音の大きさを表す単位で、一般に「騒音レベル」と呼ばれます。多くの騒音計で表示され、環境騒音の基準などにも用いられる最も一般的な指標です。

なぜ測定には「補正」が必要なのか

人間の耳は、すべての周波数の音を同じ感度で聞き取っているわけではありません。

一般的に、会話の中心となる1kHz〜4kHz(キロヘルツ)付近の音を最も敏感に感じ取り、それより低い周波数(低周波音)や高い周波数(高周波音)に対しては感度が鈍くなる特性があります。

この人間の聴感特性を評価に反映させるため、物理的な音の大きさである「音圧レベル(dB)」に、周波数ごとの感度の違いを補正するフィルターをかけたものが「騒音レベル(dBA)」です。この補正に用いられる特性は「A特性(A-weighting)」と呼ばれます。

A特性による補正の仕組み

A特性による補正では、感度が低い低周波音や高周波音の値を計算上小さくし、感度が高い中音域の値はあまり変えずに算出します。

例えば、物理的に同じ大きさ(同じ音圧レベル)の音があったとしても、周波数が低い音(例:100Hz)は大幅に小さい値に補正される、周波数が中くらいの音(例:1000Hz)はほぼ補正されず元の値に近い、周波数が高い音(例:8000Hz)は少し小さい値に補正される、というように周波数によってdBAの値は変わります。

dBAの役割と注意点

dBAは、多くの人にとっての「音のうるささ」の感覚と比較的よく相関するため、環境騒音の基準(例:騒音規制法や各種条例)などで広く公式に用いられています。

しかし、その特性上、不快感の原因が主に低周波音にある場合など、特定の周波数が問題となるケースの評価には注意が必要です。

dBAの値が基準値以下で「問題なし」とされても、特定の周波数成分が突出しているために、人によっては強い不快感を覚えることがあります。このようなケースでは、dBA(騒音レベル)だけでなく、周波数ごとのdB(音圧レベル)を分析することが、問題の客観的な把握に繋がります。

周波数分析を伴う専門的な騒音測定はご相談ください

ここまで解説してきたように、騒音問題の解決には、その音の性質を正しく理解することが不可欠です。特に、ご自身の体感と騒音計の数値が合わない、低周波音が原因と思われる、といったケースでは、一般的な「騒音レベル(dBA)」の測定だけでは不十分なことが少なくありません。

我々日本騒音調査は測定の専門家として、精密な周波数分析に基づいた騒音・低周波音の測定評価を行っています。目に見えない音を周波数ごとに「見える化」し、客観的なデータに基づいて、問題解決への道筋を立てるお手伝いをいたします。

「業者に測定してもらったが、納得のいく説明が得られなかった」

「役所に相談したが、『基準値以下なので問題ない』と言われてしまった」

「原因不明の『ブーン』という低音に、長年悩まされている」

このような状況でお困りの方は、どうぞお気軽に当社までお問い合わせください。

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