何が原因なのか、どこから発生しているかわからない不明音の発生原因
建物やその周辺ではさまざまな音が発生しますが、その中には何が原因なのか、どこから発生しているのかわからない、いわゆる「不明音」と呼ばれるような音も少なくありません。不明音の発生原因は様々ですが、その多くは熱および、風、設備によるもの、あるいは人間の生活によるものです。ただし、不明音は発生原因の究明とその対策が難しく、場合によっては問題がこじれて訴訟にいたる事例も少なくありません(例えば、顧客からの苦情に全く対応しなかった業者が「施工不良」を基に訴えられるケースなど)。
このページでは不明音の原因究明の手助けになるような、様々な不明音の事例と対策方法を紹介しています。
外壁PC板の熱収縮
発生頻度
天気のよい日の昼間(昼・夕方)に多い 一日に数回
音の聞こえ方 音色
コン、バシ、パキ、バキッ。およそ65dBA~75dBA程度
※dBA:A特性におけるdB。A特性は人間の耳にどの程度に聞こえるかを機械におとしこんだ仕様。dBは音の大きさを表す単位。
原因、要因、対策
外壁PC板の熱収縮。発生部位は、PC板ボルト固定部と考えられた。聴感、測定、怪しい部分を除去した。また、断熱材を外壁PC板に付加して発生部位と原因を特定した。測定項目は音、振動、天候で、測定部位は、対象居室、外壁PC板、各所ボード壁、ボード天井である。 すべり材を入れ替え、ボルトをゆるめにして納めた。
型枠セパレータの熱収縮
発生頻度
気温の日変動が大きい春分・秋分の前後に特に多く発生する。一日中発生するが、正午から夕方にかけて多い 十五分に一回
音の聞こえ方 音色
コン、バキッ、パキ、コトコト
原因、要因、対策
建物の温度変化によって生じた熱応力がエキスパンション・ジョイント部に残された型枠セパレータに加わり、セパレータが変形する音と推測 型枠セパレータを切断した。その後、不思議音の発生は止まった
笠木の熱変形
発生頻度
夏の朝日が昇るときに多い 月に15回程度。
音の聞こえ方 音色
ゴン
原因、要因、対策
笠木と躯体外装とが緊結されており、それぞれの熱変形量が異なるため、朝、日光が当たり始めると「ゴン」という音が発生する 屋上に断熱材を塗布したが、効果がなかった。その後、なじんだらしく、不思議音の発生はなくなった。
配水管横引き管(CD管)の笛吹き音
発生頻度
季節的傾向穴井 住居内のユニットバスや台所の換気扇を作動したとき常に発生
音の聞こえ方 音色
ピー。500Hz帯域でピーク42db。騒音等級N-40
原因、要因、対策
CD管が壁を跨いで天井スラブ内に埋設されていたため、換気扇を動かすと、CD管内部を空気が流通して笛吹き音が発生した。 CD管エンドカバー部をパテ埋めした。対策後不思議音はなくなり、騒音等級はN-30まで低下した。
エキスパンジョン・ジョイント滑り材の不具合
発生頻度
春、秋の日中と夜間の気温差が大きいとき。建物に隣接する鉄道運行時、深夜~早朝に発生。
音の聞こえ方 音色
ゴン、コン、トン
原因、要因、対策
当初、居住店上部のトップライトの熱収縮と考え、トップライト部分の固定を開放して熱収縮に追従する仕様としたが、発生回数は減少したものの、鉄道通過時の連続的な発生音の解消には至らなかった。入居者への再ヒアリングなどから共用廊下のエキスパンション・ジョイント部からの発生が改めて予想されたことから、この部分について調査を行った結果、エキスパンション・ジョイント部のステンレスすべり材の滑りが悪く、微小な振動や熱伸縮に伴い不思議音が発生していることがわかった。 エキスパンジョン・ジョイント金物部分に防振ゴムを挿入した。その後、不思議音の発生は止まった。
内装材の熱収縮
発生頻度
季節的な傾向はなく、昼夜を問わず発生。 毎時10回以上発生。
音の聞こえ方 音色
戸境壁方向から、ピッ、ピキ、ピシという音に続いてサラサラというような音が発生。また、ピッ、ピキ、ピシという音が連続して天井を移動する。発生騒音の最大値はおよび50~60dBA程度。
原因、要因、対策
軟鉄下地の熱収縮により内装材から音が発生していると想定される。熱収縮の主要因としては戸境壁上部の鉄骨梁に設けられている給排気ダクトの可能性が考えられる。
給水配管支持部の劣化
発生頻度
季節的傾向はない 頻発
音の聞こえ方 音色
バンバンバン、ダンダンダンといった音250~500Hz帯域でピークを示す。レベルは70~75dBA程度。
原因、要因、対策
地下ピット内の給水配管の支持が不十分であった上に、支持部のさびなどの劣化に伴い、配管と支持金具にずれが生じた。その為、給水時に配管が動き固体音を発生させた。 配管を再固定した結果、発生騒音はなくなった。
排気ダクトからの低周波音
発生頻度
季節的傾向はない。 不定期
音の聞こえ方 音色
8Hzに卓越する特性を示す。客室内の襖(ふすま)などの建具ががたつく。
原因、要因、対策
コージェネレーションシステムの排気ファンの基本周波数と、ダクト内の気柱共鳴現象の周波数が8Hzでほぼ一致したことにより、低周波音が客室に伝搬して建具のがたつき現象が生じた。 排気ファンと気注共鳴現象の周波数をずらす目的で、排気ファンの回転数の変更、ダクトの長さの変更、消音器の設置を進言した。
外部からの低周波音
発生頻度
季節的な傾向はなく、昼夜問わず定常的に発生する。 常時発生
音の聞こえ方 音色
ズズズーンズズズーン、ゴウーンゴウーンというような音。脈動あり。
原因、要因、対策
外部からの低周波音がサッシから透過してきたもの。約200メートルの距離に新聞印刷工場、約500メートル離れた所に水処理工場、高架道路がある。工場の大型ファン・ボイラーまた高架道路の大型車走行時の道路床板の振動のいずれかが騒音原因と思われる 室寸法、開口部等の条件がほぼ等しい洋室二室のうち、一室からのみ発生していた。非発生室はベッドなどがあり、クローゼットもあるのに対し、発生室はOA機器机程度しかなかった。巧みに発生室内に吸音体(応接セットなど)を入れてみることを進言。
ディスポーザー設備の低周波騒音
発生頻度
近隣集合住宅竣工後に発生。 発生時刻に周期性がある
音の聞こえ方 音色
ウーンウーン。騒音レベルは40dBA以下。低周波音。
原因、要因、対策
近隣集合住宅に設置されたディスポーザーフロアの臭突換気の末端が集合住宅屋上のハト小屋に出ており、そこからの放射音が原因であった。臭突の経路上での共鳴音と考えられる。 臭突の経路内に消音チャンバーを設けることを検討したが、設置が困難であったため、ハト小屋上にチャンバーを設置した。設置後、問題は解消した。
ウォーターハンマー
発生頻度
季節的傾向はない。 不定期。二日間の調査の中で三回観測された。
音の聞こえ方 音色
コン、コンコンというゴルフボールを至近距離から落として連続的に跳ね返るような音。250Hz帯域でピークを持つ。レベルは30~45dBA程度。
原因、要因、対策
給水配管のウォーターハンマーによる固体伝搬音。別棟への給水配管が対象住戸の直下ピットを通っており、スラブから吊支持されていたため、固体伝搬音が発生した。
高層建築の風揺れ
発生頻度
春先、台風シーズンなどの強風発生時 強風時に頻発
音の聞こえ方 音色
トン、パキ、コンという衝撃性の音。またギーというきしみ音。騒音レベルは、大きい場合で35~40dBA程度。
原因、要因、対策
強風で建物全体が揺れる際、躯体の動きに追従できずに内装材にゆがみが生じ、それが戻ろうとするときに衝撃音が発生していた。また、躯体の動きに伴って内装材が躯体や他の内装材とすれる時の発生音であった。 仕上げボードと躯体が接触しているところはクリアランスを確保した。また、間仕切壁や天井の下地が固定されているところをフリーにした。その結果、稀な強風時は多少発生するが、一般的な強風時の発生はなくなった。
測定による発生源の特定・推定
不明音の原因と考えられる設備が複数あり、どの設備から音が出ているかが明瞭でない場合には騒音計による測定が有効です。騒音計は音圧(dB:デシベル)を測定するための装置ですので、設備の直近および離れた位置における各位置での測定・分析を行えば「どの設備で最も大きい音圧が発生しているのか」をデータ上で判断できるようになるためです。また、騒音計の種類によっては「周波数毎の音圧」をデータ化できますので、苦情が発生している部屋と設備毎に周波数毎の音圧を比較することで騒音源を推定・特定できる場合もあります。測定による定量的なデータ比較、騒音源の推定・特定をご検討の際はお気軽に当社までお声掛けください(>>お問い合わせはこちらから)。
また、下記ページでは上記の調査についてより詳しく説明しておりますので、調査等をご検討でしたら是非ご覧ください。関連コンテンツ:騒音調査による騒音発生源の特定・推定