子ども文化センターの利用者の発する騒音の差止が却下された事件
子ども文化センターの利用者の発する騒音の差止が却下された事件
判例
騒音差止等仮処分申立事件
判決
・債権者らの申立てをいずれも却下
・申立費用は債権者らの負担
事実
・債権者は子ども文化センターに隣接する住居の居住者夫婦
・債務者は市
騒音調査の結果
・債権者ら
債権者らが市から借り受けた騒音計では60dB台を中心に70dBの範囲で騒音が発生しており、最大Lmax値90.3dBから最小Lmax値56.2dBが確認された。
騒音測定会社による測定では60dB台を中心に70dBの範囲で騒音の発生が確認され、また42dBを下限とし、50dBから65dBを中心に70dBを超える騒音が数十回測定された。
債権者らの主張(訴訟と別件となる仮処分申立のため「事実」に近い内容)
・子ども文化センターからの耐え難い騒音を受け、精神的変調を来した。
・病院に通い精神安定剤等の投薬治療を受けている。
・仕事の疲れを癒す日に騒音で苦しめられ、疲れを残したまま仕事に出かけている。
・債務者に対して手紙やメール等で本件騒音についての苦情を申し立ててきた。
・債務者に滑り台の撤去を申請した。
・滑り台の撤去前は、滑り台を撤去すれば騒音が無くなると考えていた。
・滑り台の撤去により騒音の緩和がなかったため、債務者に様々な申請を行なった。
・施設の利用禁止ということは考えていない。
債務者の主張(訴訟と別件となる仮処分申立のため「事実」に近い内容)
・苦情に対して必要と思われる措置をとり、その内容について回答するなどしてきた。
・債権者らの要望に応え、滑り台を撤去した。
・債権者らの要望に応え、施設敷地内の樹木の剪定を行った。
・プレイパーク入り口に開館時間前に立ち入らないよう注意書をした。
・施設の周囲にプラスチックワイヤーを設置するなどの措置をとった。
・プレイパーク内のログハウス等の屋根に登らないよう知らせることを行なった。
裁判所の判断
・測定結果から、本件騒音が債権者らに精神的な苦痛を与えていることは否定できない。
・ただし測定結果は50dB台と静かな事務室の程度である。
・子どもの声はこれを騒音と感じるか否かは主観的要素も多いものと考えられる。
・債権者らの主張は、単なる精神的不快感を示すに過ぎないともいえる。
・債権者らの精神的苦痛についての主張は認めるに足る客観的な疎明資料がない。
・債権者らは防音壁及び防音建物の建設を提案したが、債務者市は債権者夫婦個人の利益のため予算をとることは不可として拒絶した。
・個人の利益のために税金の使用は不可という債務者市の考えは理解可能である。
・債権者ら以外の地域住民からの苦情を認めるに足る疎明資料はない。
・本件施設は公共性ないし公益上の必要性がある。
・本件施設の目的は子どもの健全な育成につながるものである。
・大人たちによる利用方法等の話し合い、互いの理解の深化が必要との債務者の考え方にも一理ある。
・被害の防止措置もとられている。
・債務者らの対応が不誠実であったとは言い難い。
・債権者らは本件施設が設置された約一五年後にその隣地に居住するに至っている。
・以上から本件騒音が受忍限度を超えているとは認め難く、認めるに足る疎明はない。
・債権者らの申立は被保全権利の疎明がなく、理由がないものとして却下する。