騒音発生主を強制退去させるためにやるべきこと、やってはいけないこと

【この記事でわかること】

・騒音主の強制退去が難しい理由と法的背景
・被害住民が絶対にやってはいけないNG行動とその理由
・大家さん・管理会社向けの任意退去交渉の進め方と文例
・裁判・調停で有効な証拠の種類と集め方
・強制退去の法的根拠(信頼関係破壊の法理)

強制退去が難しい理由

あなたが物件に入居する被害住民(個人)であれ、貸主(オーナー・大家さん・管理会社)であれ、居住する騒音主を強制退去させることは簡単ではないということです。日本における法律(借地借家法等)では、貸主側よりも入居者が手厚く守られていることが大きな理由です(例えば、2か月程度家賃を滞納していてもすぐに強制退去させることは難しいのが現実です)。したがって、強制退去を実現するためには根気と強い意志が必要であり、それがなければ目的の達成は難しいと言わざるを得ません。

また、生活騒音については法律や条例による明確な規制基準が設けられていないことも、問題を複雑にしている一因です。実際の民事訴訟では、環境基準を受忍限度判断のよりどころとして活用するケースが多く見られますが、それ以前に「継続的な証拠の積み重ね」が不可欠となります。

強制退去までの流れ

強制退去の実現には、段階的な手続きが必要です。具体的・一般的な流れと目安期間は以下のとおりです。なお、以下は各段階で解決しなかった場合は次の段階に進む、という形で記載しています(実際は以下の各段階のいずれかで賃借人が退去する場合もあります)。また、以下に記載する期間に終点を記載していない(~と表現している)のは、担当する機関や人のスケジュールによっては相当に長期間かかる場合があり、最大でどの程度期間を要するか確定できないためです。

1.口頭・書面による注意・警告
管理会社・大家を通じた注意、または匿名の警告文の投函
目安:1週間~

2.証拠の収集(騒音測定結果・診断書の取得など)
専門機関による騒音測定データ・報告書の取得、医師による診断書の取得
目安:1か月~

3.内容証明郵便による書面警告
弁護士を通じた正式な書面による退去勧告・契約違反の通知
目安:1週間~

4.任意退去交渉
大家・管理会社または弁護士を通じた退去の提案・協議
目安:1か月~

5.解除通知(内容証明)発送
賃借契約の解除を書面で発送
目安:1週間〜

6.提訴
裁判所へ部屋の「明け渡し」を求める訴状提出・第1回口頭弁論期日決定
目安:1か月〜

7.口頭弁論・判決
証拠の提出、その他状況により証人の尋問・専門家の意見聴取など
目安:3か月〜

8.強制執行申立て
契約解除・明け渡し請求が認められた場合、強制的に明渡を行わせるための「強制執行」が申し立て可能になります。
目安:1か月~

9.明渡催告
執行官が物件に行き、断行日(強制執行が行われる日)を記載した公文書を提示します。この催告が行われた日から約1か月後が退去期限となります。
目安:1か月~

10.明渡断行
期限内に退去しなかった場合、執行業者によって強制的に占有者や部屋の中のものが運び出されます。
目安:催告日の約1か月後

 

【被害住民の方向け】やってはいけないNG行動

騒音主の強制退去を目的とする被害住民の方は、感情的になりがちな状況だからこそ、以下のNG行動を徹底して避けてください。これらの行動は状況を悪化させるだけでなく、あなた自身が法的リスクを負う可能性があります。

絶対にやってはいけないこと

×直接苦情を言う・怒鳴り込む
家主や管理会社を通さず直接本人に苦情を伝えることや、自身の名前を明記した手紙(警告文)は状況を悪化させる可能性があります。近年では逆上した相手が「逆切れ」してさらに嫌がらせや危害を加えてくる事件の報道も増えています。当社ではほぼすべての相談ケースでお勧めしていません。

×騒音への仕返し・応戦をする
「こちらも音を出してやる」という仕返しは、相手に「あなたも騒音を出している」という反論の口実を与えます。あなた自身が騒音主として苦情を受ける立場になりかねず、訴訟において不利な立場に立たされる可能性があります。

×SNS・インターネット掲示板に個人情報を投稿する
相手の氏名・部屋番号などを投稿した場合、名誉棄損やプライバシー侵害で逆に訴えられるリスクがあります。

×無断で相手の部屋を録画・録音する
相手の部屋の内部を無断で録音・録画することはプライバシー侵害になる場合があります。廊下などの共用部での記録は状況により異なりますが、事前に専門家に確認することをお勧めします。

×感情的な文書で管理会社・大家に苦情を送る
主観的・感情的な表現が多い苦情は、管理会社・大家が「対応しにくい」と判断する原因になります。客観的な記録(日時・音の種類・継続時間)とセットで伝えることが効果的です。

 

【被害住民の方向け】やるべきこと

■騒音の記録をつける
日時・音の種類・継続時間・感じた影響を毎回記録する。手書きの連続メモが改ざん防止の観点から有効。

■管理会社・大家に書面で相談する
口頭ではなく書面(メール可)で相談し、その記録を保存する。

■専門機関による騒音測定を依頼する
ボイスレコーダーではなく、騒音計による定量的な測定データを取得する。

■体調不良があれば病院を受診し診断書を取得する
不眠・抑うつ状態などの診断書は証拠として有効になる場合があります。

■弁護士・公的相談窓口に相談する
一人で抱え込まず、早期に専門家の意見を聞くことが解決への近道です。

貸主大家は「平穏に使用収益させる債務」を負っている

大家さんや管理会社に騒音の相談をしても「住民同士の問題は住民どうして解決してください」などと言って全く対応してくれないこともあります(実際にそういったお客様からのご相談を多数受けております)。ただ、一般的にはあまり知られていませんが、実は賃借人(大家さん)は「使用収益させる義務」を負っています。つまり借主(住民)が「安全で平穏に」物件を使用できる状態を保つ義務があると言い換えることができるかもしれません(たとえば共用階段の保全などもこの義務により行わなくてはなりません)。つまり住民が「安全で平穏に」物件を使用できていない場合、大家さんはこれに対応せざるを得ないのです。

仲間を集めることが解決への近道


大家さんに訴える際に可能であれば、近隣の住民と協力するとさらに解決への近道となります。多くの場合大家さんは集合住宅に住んでいないので、自分自身では騒音に触れていません。したがって一人だけが「うるさい」と訴えても、「この人が敏感なだけなのでは」と思われてしまうことがあるからです。

また、大家さんや管理会社からしてみれば、「多くの住民が迷惑している=多くの住民が一斉に退去しまうかもしれない」と考えるため、訴えている人が多いほど、より真剣に考えるようになるはずです。

【大家・管理会社向け】任意退去交渉の進め方

大家さんや管理会社の担当者が任意退去の交渉を行う場合、実際に騒音主に対して退去を求める意思を伝えることになりますが、その際は直接的・感情的な表現は避け、あくまでも冷静に提案を行うよう心がけてください。

交渉の3ステップ

第1段階:口頭での注意・記録

記録・事実のみを冷静に伝えます。注意を行った日時・内容・相手の反応を必ず記録してください。

第2段階:書面(内容証明郵便)での警告

口頭での注意に改善が見られない場合、弁護士を通じた内容証明郵便による正式な警告を行います。「苦情が来ていること」「契約違反に該当する可能性があること」「改善されない場合は法的手続きに進む可能性があること」を明記します。

第3段階:任意退去の提案

以下のような表現で、あくまで「提案」として伝えることがポイントです。

交渉文例

「何度かご注意させていただき、ご配慮いただいているとは思うのですが、依然として他の住民の方からご苦情をいただいております。騒音は一度気になり始めるとより気になってしまう傾向がありますので、他の住民の方も神経質になっているのかもしれません。ただ、管理する側としては、発生している音が基準値を超えている以上、繰り返しご連絡せざるを得ない状況です。このまま解決しない場合、訴訟に発展する可能性もございますので、もし可能であれば早めにご転居先をお探しになることが賃借人様にとってもよりよい選択かと存じますが、いかがでしょうか。」

交渉時の注意点

手続き

費用の目安

弁護士への法律相談

30分5,000円〜1万円程度

内容証明郵便の作成(弁護士依頼)

3万〜5万円程度

民事訴訟の弁護士費用(着手金)

10万円〜(案件規模による)

騒音測定・調査費用

案件内容による(要お問い合わせ)

・交渉のすべての過程を記録として残すこと(日時・内容・相手の反応)

・「出て行け」などの直接的・威圧的な表現は避けること(脅迫と受け取られるリスクあり)

・正式な法的手続きに進む前に、必ず弁護士に相談すること

証拠の収集:騒音主を退去させるために必要な準備

騒音の苦情に対して大家さんや管理会社に「証拠がないと対応できない」と言われた場合、注意しても騒音主が改善しないために調停や訴訟を行う場合、または強制退去を目的として訴訟を行う場合などには、騒音の証拠を集める必要があります。

この証拠とは、病院による診断書※や騒音の測定データを分析・解析することによって得られる報告書など、「騒音が発生していた事実を示す、客観的かつ定量的な資料」のことです。こうした資料を得るためには、どの程度の音量で、どの程度の時間、どのような種類の音が発生しているかを記録することが必要です。

※ 身体の不調や精神的なつらさを感じている場合は、早めに病院を受診し診断書を取得してください。音が原因で不眠や抑うつ状態になったという診断書は、証拠として有効になる場合があります。

手続き

費用の目安

弁護士への法律相談

30分5,000円〜1万円程度

内容証明郵便の作成(弁護士依頼)

3万〜5万円程度

民事訴訟の弁護士費用(着手金)

10万円〜(案件規模による)

騒音測定・調査費用

案件内容による(要お問い合わせ)

 

裁判の争点は「信頼関係が破壊されているか否か」


賃貸借契約は非常に強い契約で「信頼関係の破壊(背信性)と認めるに足る特段の事情」がある場合には解除することができます(下記判例参考)。この表現だと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「大家さんと住人の間で信頼関係が破壊されていれば契約を解除できる」という意味です。つまり、騒音主が度重なる注意にも関わらず、何の改善もみられず、受忍限度を超える音(騒音)を出し続けていることなどを証明して「信頼関係が破壊されていること」を裁判所に認めてもらうことになります。

■参考判例:昭和24(オ)143

「およそ,賃貸借は,当事者相互の信頼関係を基礎とする継続的契約であるから,賃貸借の継続中に,当事者の一方に,その信頼関係を裏切つて,賃貸借関係の継続を著しく困難ならしめるような不信行為のあつた場合には,相手方は,賃貸借を将来に向つて,解除することができるものと解しなければならない」

近年の判例では、損害賠償請求や差し止め請求が認められるケースが増えてきていますが、一方で「騒音の証拠が録音機・騒音計に記録されていなかった」「周囲の住人に騒音が聞こえていなかった」などの理由で棄却されたケースも存在します。証拠収集の質と量が、訴訟の行方を大きく左右します。

騒音調査や測定については当社までお気軽にご相談ください

当社では、騒音調査や測定を通じて騒音トラブルの解決のお手伝いをしています。騒音についての証拠を集められている場合(騒音の報告書が必要な場合)、その他騒音についての課題やお悩みがある場合はこちらからお気軽にご相談ください(騒音についてのご相談はこちらから>>ご依頼・問い合わせページ

低周波音とは
法人・事業所・各種団体様
騒音訴訟と判例 騒音トラブル事件簿

リンク

リンク

問い合わせリンク