電車の反射騒音について損害賠償が認められなかった事件

判決

・被控訴人らの請求を棄却
・訴訟費用は全て被控訴人らの負担

事実

・控訴人は線路脇にマンション建設工事を行っていた業者。
・被控訴人らは線路反対側に居住。

騒音調査の結果

騒音計による測定により、約80~94dBの騒音が発生していることがわかった。

控訴人の主張

・騒音被害については電鉄会社か道路を管理する行政に対し責任を追及すべきである。
・被控訴人らの測定結果では全体音が94dB、反射音が82.2dB、計算上の合成音は94.3であるので、反射音の影響はわずか0.3dBに過ぎない。
・上記はマンション建設後の測定結果であり、建設前との比較不可のため、騒音の増大を認めることはできない。
・マンションから吹き下ろす風による騒音レベルの増大を主張しているが、影響及び影響の予測が困難であり、我々の過失とはいえない。
・上記から、被控訴人らの「反射により騒音が増大した」とする主張は誤りである。
・損害賠償、慰謝料については認めることができない。

被控訴人らの主張

・マンションの建設中、工事による騒音被害も存在した。
・飼い犬が暴れ、犬小屋が壊れた上、犬の価値も下がったといえる。
・防音のための改装工事費も必要であり、その費用も損害として認めるべきである。
・マンションによるビル風により瓦が壊れたため損害を認めるべきである。
・プライバシー保護のためのブラインド設置費用も損害と認めるべきである。
・本来受忍限度ぎりぎりの状態に置かれていたため、多少の騒音の増大は深刻で重大な問題である。
・以上から損害賠償、及び慰謝料として計500万円の支払いを求める。

裁判所の判断

・騒音被害について電鉄会社か行政に対し責任を追及すべきとすることには理由がない。
・2回という測定回数から、測定された値を当該地点の平均値とすることは認めにくい。
・反射音の影響は0.5dBを下回るため、騒音の増加は僅かなものであり、受忍限度内と判断される。
・上記より反射騒音の賠償を要することは、社会通念上相当とは解されない。
・一般的に隣家が一階分高い例は極めて多く、また12mもの距離があるためプライバシー被害は少ないといえるし、カーテンを用いれば充分である。このことは困難なこととは考えられない上、多くの人が行っていることである。
・風害についての判断は原判決の事実及び理由のとおりであるためそちらを引用する。
・以上より損害賠償の原因とすべき電車騒音の増大があったとは認められない。
・またプライバシーの侵害による損害も認められない。
・前記の請求が全て認められないため、被控訴人の測定費用、弁護士費用、損害賠償請求も理由がない。
・一部認容した原判決を取り消し、請求を棄却する。

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