建物の建築内容に問題ないとして請負代金請求が認められた事件
判決
・被告は原告からの約194万円の支払いと引換えに、原告に対し約434万円を支払え
・被告は訴訟費用の99/100を負担する事
事実
・原告は建築請負を行う株式会社
・被告は原告によって店舗兼住宅を建築された株式会社の代表取締役
騒音調査(振動調査)の結果
・原告調査
加速度振幅の最大値は2.27gal、1.82gal(3~4Hzにおけるもの)であった。
※加速度振幅:振動を表す際に用いられることがある単位。
※1gal:1秒に1cm毎秒(cm/s)の加速度の大きさ。
※一般的なgalの程度:以下に記載
無感:0.8 gal(55 dB)以下
微震:0.8 ~ 2.5 gal(55 ~ 65 dB)
軽震:2.5 ~ 8.0 gal(65 ~ 75 dB)
弱震:8.0 ~ 25.0 gal(75 ~ 85 dB)
中震:25 ~ 80gal(85 ~ 95 dB)
強震:80 ~ 250 gal(95 ~ 105 dB)
烈震:250 ~ 400 gal(105 ~ 110 dB)
激震:400 gal(110 dB)以上
・被告調査
ランクⅡを超え、ランクⅢも超過する結果が得られた。
※ランク:強風によって建物に生じる水平振動を評価する場合の基準。適用範囲の周波数は0.1~1.0Hzの低周波振動。
原告の主張
・被告に注文された追加変更工事を含めて本件工事は完成した。
・被告の主張は全て補修可能であり建物を建て替えるほどの重大なものはない。
・被告と被告企業は別人格であるから企業の損害が被告の損害となる余地はない。
・被告の主張するような慰謝料が発生する余地もない。
・被告は原告に対して請負残代金を支払え。
・請負残代金を支払うまでは損害賠償金の支払を拒絶する。
・請負残代金として433万4725円、及び支払済みまで1日1/1000の割合を支払え。
被告の主張
・本件工事は完成していない。
・原告が行った建築工事は強度、安全性に欠けるなど重大な欠陥がある。
・建物の振動がひどく、シャッターが納まらないなど、基礎鉄骨工事の欠陥がある。
・欠陥を除去するには本件建物を取り除き、全体を解体して建て替えるほかない。
・原告に対して、債務不履行及び瑕疵修補費用として損害賠償を請求する。
・工事期間中の休業、雨漏りによる備品の損害、慰謝料として損害賠償を請求する。
・損害賠償金を支払うまでは請負残代金の支払を拒絶する。
・損害賠償として1億7207万3574円及び支払済みまで年6分の割合を支払え。
裁判所の判断
・原告の振動調査の信用性に疑問を抱く事情は見当たらず、採用するのが相当である。
・本件振動は、建物の居住性能を評価する基準において基準を下回ることが認められる。
・本件振動は社会通念上受忍限度の範囲内にあるものと推認される。
・本件振動は被告の主張通り瑕疵と評価しうるほどのものではない。
・被告の調査結果は到底信用できないものである。
・本件建物の構造を鉄骨構造にすることは被告の希望でもあったことが認められる。
・被告は鉄骨構造の建物が揺れやすいことを知っていたことが認められる。
・原告が被告に対し、振動に関する説明義務があったと解することはできない。
・シャッターに被告の主張する瑕疵があることは当事者間に争いがない。
・床スラブについては瑕疵が認められ、修補は必要である。
・原告による施工をやり直す必要があるとまでは認められない。
・本件建物の地盤や基礎工事に欠陥があることを示すことを認めるに足りる証拠はない。
・本件建物に構造上の問題はなく、債務不履行があるとはいえない。
・原告は被告に瑕疵担保責任に基づき193万5740円を支払う限度で理由がある。
・被告は原告に本件請負契約に基づき433万4725円を支払う限度で理由がある。
・その余は理由がないから棄却する。