マンホールによる騒音に対する損害賠償請求が棄却された事件
判例
損害賠償等請求事件
判決
・原告らの請求をいずれも棄却
・訴訟費用は全て原告らの負担
事実
・原告は本件マンホールの付近に住む居住者夫婦
・被告はマンホールを設置した会社及び市
騒音調査の結果
・原告らの調査
原告ら自宅2階部分でLmax※で55dB~70dBの振動が発生していた。
※Lmax:本件では振動の測定のため、最大振動値(騒音の場合は最大騒音値を示す)。
・被告らの調査
測定計5回のL10※を算出すると、昼間47~56dB、夜間41~49dBであった。
※L10:5秒間隔100個間又はこれに準ずる間隔で測定を行い、個数の測定値の80%レンジの上端の数値を、昼間及び夜間の区分ごとに全て平均した数値。
原告らの主張
・深夜早朝の振動で睡眠障害や不快感にさらされ、多大な精神的損害を被ってきた。
・本件振動は大型自動車のマンホール上の通過によって生じることが明らかである。
・被告らは本件道路の管理権限と共に管理義務を負うものである。
・振動被害について被告らが不法行為責任又は営造物責任を負うことは当然である。
・被告らには配慮もしくは補修により振動を起こさせない義務がある。
・振動の防止が不可能であるならば、本件マンホールを撤去すべき義務がある。
・被告らは共同不法行為の加害者としての連帯責任を負うものである。
・振動規制法は単に規制基準を定めた法律で、受忍限度の基準となるものではない。
・測定場所は本件建物の2階とし、測定値はLmaxによって算定されるべきである。
・調査の結果から、本件振動は受忍限度を超える。
・損害賠償として原告二人に各164万2500円及び年五分の割合による金員を支払え。
・マンホールの振動を除去、もしくは常時55dB未満まで低減させる措置を施せ。
被告らの主張
・振動の原因は、埋め土で造成した土地自体、地下の分水路トンネルにある。
・規制を無視し本件道路を走る大型トラック運転者らにも振動の原因がある。
・マンホール自体に振動を生じさせる要因があるとはいえない。
・受忍限度は振動規制法により検討されるべきである。
・測定場所は道路の敷地の境界線、測定値はL10に従うべきである。
・原告らの振動被害は、振動規制法の要請限度を十分に下回る。
・原告らが主張する振動は、その受忍限度を超えず違法ではない。
被告市のみの主張
・マンホールの所有管理は被告会社のみが行い、被告市は管理責任も義務も負わない。
・仮に振動被害が生じたとして、被告市は不法行為責任や営造物責任を負わない。
裁判所の判断
・被告市は被告会社に占有使用許可を与えているため責任を免れるとは解せない。
・本件道路を設置した被告らが責任を免れ得るとすることはできない。
・振動規制法が受忍限度の範囲と解する理由はない。
・L10は有意な評価方法であるが、本件の検討ではLmaxが最重要となる。
・原告調査結果から、本件マンホールが振動を拡大させていることは明らかである。
・調査結果の総合的評価から、原告らが感じる振動は長時間とはいえない。
・「振動が睡眠に与える影響についての基準」から、睡眠妨害は4回あった程度である。
・被告市は警察署に大型貨物自動車等の通行止め規制の強化をするよう要請した。
・被告会社はマンホールの移設工事、振動測定調査等に相応の費用を負担している。
・被告らの対応後、原告が再度苦情を述べたことを認めるに足る証拠はない。
・被告らの対応により一定の振動低減化効果があったことは推認される。
・被告らは原告らの振動被害の訴えに対して適切な対処をしてきたといえる。
・原告らの振動被害は受忍限度内にあり、被告らに違法性があることは認められない。
・原告らの被告らに対する各請求は、いずれも理由がない。