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スマホで低周波音は測定できる?低周波騒音を測定できるアプリはある?

 

スマホで低周波音は測定できる?低周波騒音を測定できるアプリはある?

低周波音の問題は騒音関連問題の中でも取り扱いが難しいものの一つです。近年は高性能なスマートフォンが普及し、騒音を録音したり疑似的に騒音レベルを表示するアプリがあります(>騒音計測アプリについて検証した記事はこちらからご覧ください)。では低周波音についてはスマートフォンで録音や測定ができるのでしょうか。本ページではこの疑問にお答えしたいと思います。

スマートフォンのマイク感度は20Hz~

低周波音の計測系は一般に「音をとらえるマイク部」と「捉えた音を補正し解析するためのソフトウェア部(アプリ)」に別れます。低周波音を計測できるかはまず第一にマイク仕様の問題があります。発生している音に対してマイクの感度が対応していなければそもそも音を計測することができません。マイクがどの周波領数域に対応したものかを示す仕様に「周波数特性」があります。スマホに内蔵されているマイクの仕様や感度はあまり公開されていませんが、一般的なダイナミックマイクの場合周波数特性は40Hz~16kHz、コンデンサーマイクの場合は周波数特性は20Hz~20kHzとなっています。いずれも人間の可聴域(耳で聞こえる音の範囲)に対応した仕様となっています。

一般的なマイクでは低周波音は適切にとらえられない

一方で低周波音とは一般的に「100Hz以下」の音とされており、環境省が定める参照値のうち「物的苦情に関する参照値」は5~50Hzの範囲で定められています(>低周波音の基準についてはこちらから)(>さらに周波数の低い超低周波音についてはこちらから)。マイクの周波数特性にこの範囲が含まれていない場合適切に発生している低周波音をとらえ、評価することができません。言い換えると測定結果の値が大きかったとしても、小さかったとしても、それをもって大きな低周波音が発生している(していない)と判断することはできません。つまり一般的なマイクでは低周波音を適切にとらえることはできないのです。

マイク感度が適切でも低周波音の大きさ・絶対値はわからない(キャリブレーションの問題)

さらに、スマートフォンと騒音測定器(低周波音レベル計)はキャリブレーション(校正)の有無という点でも異なります。測定器は発生している音の絶対値を計測する目的の校正が行われていますが、スマートフォンのマイクは用途が異なるため通常そのような校正は行われていません。したがって仮に搭載されているマイクの周波数特性が低周波音の計測に適したものであっても、低周波音の大きさ(絶対値)については明らかにすることはできません。確かに低周波音が発生していたとしても、その大きさが参照値(基準値)を超えるものかどうかはわからないということです。一方で発生有無や相対的な低周波音の大きさ(A地点とB地点ではA地点の方が大きいといったもの)を明らかにするといった使い方であれば使用可能な場合もあります。

低周波音を測定可能なアプリはある?

2022年時点でAndroidでは対応するアプリはありませんでしたが、App storeでは有料のアプリが存在するようです(ここではリンクは張りませんので、ご興味のある方は調べてみてください)。ただし上記解説に関連する、下記のような注意書きがアプリ紹介ページにあり、使用方法や使用シーンについてはよく理解したうえで使用すべきでしょう。
・相対的なパワー値であり、一般的な騒音計で測定する騒音値ではないこと。
・iPhone内蔵マイクは低周波音に対する感度が低く大音量の計測には適していないこと
・iPhoneの個体差により、解析結果にばらつきを生じることがあること
・1kHz成分が含まれている場合精度が大幅に低下すること”

低周波音をスマホで測定できるか?のまとめ

本記事のまとめです
・一般的なマイクは低周波音についての感度が低い(とらえられない)
・仮にマイクが対応していても、校正の問題により低周波音の絶対値はわからない(絶対値がわからないと基準と比較することができない)
・一方でそもそも低周波音が発生しているかを簡易的に確認することや、相対的な低周波音の大きさを比較するためにはスマホアプリが使用できる可能性がある(未検証)

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