大学合宿所の騒音と振動による被害により慰謝料の請求が認められた事件

判決

・被告は原告らに対して計45万円を支払うこと
・訴訟費用は1/15が被告の負担

事実

・原告は大学の合宿所近隣の居住者ら3人。
・被告は合宿所を持つ大学。
・原告らが訴訟を提起する以前に合意が成立し合意書が書かれている。
・合意書により合宿所の改築工事が行われ、大学内規が整備された。
・合意後、調停、不調、訴訟、の流れとなった。

騒音調査の結果

60~90dBの騒音が測定された。
※当該地域の受忍限度は45dB

原告らの主張

・学生らが深夜に合宿所で、宴会、電話、車や自転車による騒音を長時間発生させた。
・学生らが合宿所で台所作業、洗濯、バーベルの使用により騒音や振動を発生させた。
・ビデオカメラによる録画で約30400回以上の騒音を特定した。
・住居地の境界線上において、自転車ブレーキ音で90dB以上、自動車の出入りで約70~80dB、その他は約50dB以上の騒音が発生していた。
・原告Aはタクシー運転手で、睡眠不足による夜間の営業自粛により損害を生じた。
・原告Bはストレスから体調を崩し、出血で救急搬送されたこともあった。
・原告Cは思考力低下、体調不良により仕事ができなくなり辞職せざるを得なかった。
・学生らが出す騒音は受忍限度を超えるものであった。
・合意書の内容にも反しているため債務不履行といえる。
・原告3人に、それぞれ219万円及び年5分の割合による慰謝料を支払うべきである。

被告の主張

・原告の主張内容では、騒音が発生していない期間も計26ヶ月はあった。
・合宿所付近には国道があるため、約45dB~50dBの騒音が恒常的に発生している。
・原告らが主張する騒音は、生活騒音かつコミュニケーション、トレーニングに伴うもので、社会的有用性の高い行為に起因する。
・原告らの被害は主観的な感情であり、客観的な裏付けはない。
・原告らは合宿所に隣接する住居に自ら転居しており、自ら危険に接近している。
・原告Aは高齢であり、元々加齢による減収があるはずである。
・原告Cはアルバイトのみ行い事実上無職であったため収入の減少と本件は関係ない。
・学生らが出す物音は受忍限度内である。
・合意書の記載通り履行しているので債務不履行とはいえない。

裁判所の判断

・本件の争点になっている音と振動は単発的に生じるものであり、等価音圧レベル※のみでなく、性質、最大音圧レベル、継続時間等を総合的に考慮すべきである。
・ビデオカメラより、宴会があった事実、原告らの住居でその音が聞き取れる程度であったことは認められる。
・自転車のブレーキによる騒音は、一部は学生らが発したものである。
・自動車及びバイクの騒音は、一部は学生らが発したものである。
・上記以外の騒音については近隣住民からの物音を多数含むため、学生らによるものとはいえない。
・振動の発生源、程度がどのようなものであったかを認めるにたる証拠はない。
・原告ら以外の近隣住民からの苦情も証言されており、被告の債務不履行は認められる。
・原告らに経済的、身体的影響が発生したことを裏付ける客観的証拠はない。
・原告らは年に3回とはいえ安眠を妨げられ、日常生活の平穏を害されていたといえる。
・受忍限度を超える日が年3回、その他の日は受忍限度の範囲内である。
・以上から原告らに対してそれぞれ慰謝料として15万円の支払いが相当である。
※音圧レベルが時間とともに変化する場合に、測定時間内でこれと等しいエネルギーを持った連続定常音の音圧レベル

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