公衆浴場のボイラーにより騒音の被害を受けたとする住民の損害賠償請求が棄却された事例

判決

・原告らの請求を棄却
・訴訟費用は全て原告らの負担

事実

・被告は公衆浴場の経営者。
・原告らは公衆浴場の近隣住民。

騒音調査の結果

原告による騒音計での測定により、57~60dBの騒音が発生していることがわかった。
その後、被告による騒音計での測定により、同様に57~60dBの騒音が発生していることがわかり、被告による防音工事の施工後の測定では47dBの音圧に低減されたことが確認された。
※裁判は上記防音工事施工後に行われている。

原告らの主張

・公衆浴場のボイラーは常時57~60dBの騒音を発生させている。
・騒音は条例の規制に違反するものであり、不法行為である。
・ボイラーの騒音により不眠、体調不良を生じたため、受忍限度を超えている。
・被告の一人は騒音の被害により身体障害程度等級1級となった。
・公衆浴場の建物の老朽化による不安に対する慰謝料も必要である。
・慰謝料として合計2206万9480円及び、内1005万9370円に対する支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

被告の主張

・騒音を発生させたことは認めない。
・公衆浴場のボイラー音は受忍限度を超えるものではなく違法でない。
・建物の老朽化による不法行為も認めない。
・説明時にはオートレースが開催されており、レースの音も聞いたはずである。
・マンションはオートレース場に隣接しており、目視でも自然に確認されるはずである。
・以上から、原告はオートレース場が隣接することを事前に知っていた。
・原告の説明義務違反の主張は争う。

裁判所の判断

・被告が条例に違反しているという1点のみで受忍限度の判断を行うべきではない。
・ボイラー騒音の受忍限度の判断は、窓を閉めた室内で測定した数値の検討が適切である。
・原告らの測定では、敷地境界で常時57dBの騒音が生じていたとは推認できない。
・原告らの測定場所が屋外であるため、室内に流入するボイラー騒音は窓を閉めることによって相当程度低下するものと推測される。
・被告の一人が身体障害程度等級1級になったことは認められるが、ボイラー騒音がその原因となったことを裏付ける客観的な資料はなく、因果関係を認めるに足る証拠はない。
・被告は原告らから苦情の申立てを受けた後、速やかに防音対策に着手している。
・防音工事により、ボイラー騒音の測定値は屋外敷地境界付近で47dBまで低減しているため、相当の効果を挙げているといえる。
・防音工事後の測定結果では、ボイラー騒音は条例を超えていないことが認められる。
・ボイラー停止状態での測定結果は47dBであるので、ボイラー音による影響は条例所定の騒音レベルを1dB超えるだけにとどまる。
・ボイラー音は、原告らの住居内部に到達する段階では、反射、距離減衰、回折減衰等の効果により更に数dBが減少していると推認される。
・以上から被告公衆浴場のボイラー騒音が原告らとの関係において社会生活上の受忍限度を超えるものであったとはいえない。
・公衆浴場の建物及び周囲に火災、倒壊の発生する具体的な危険があることを認めるに足りる事情ないし証拠はない。
・以上より原告らの請求はいずれも理由がないから棄却する。

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