賃貸マンションにおける低周波音レベルの測定と、測定データのG特性音圧レベル、オクターブバンドの解析(周波数分析)
1.報告概要
○○○○様のご依頼により、低周波音レベル計による測定が行われ、G特性音圧レベルの解析、各周波数帯における測定値の解析を行なった。
2.測定条件
○○○○
3.測定機器と設定
・低周波音レベル計NA-18A
・周波数重み特性:G特性
・分析周波数範囲:1/3オクターブ分析
・時間重み特性:SLOW
・サンプリングレート:1min
4.測定結果
測定期間中のG特性音圧レベルのグラフ、G特性音圧レベル平均値を示す。また、1/3オクターブバンド分析における各中心周波数帯の等価騒音レベルと環境省による参照値との比較をグラフ、及び表にして表した。
※4-2、4-3では、
赤:今回の測定における各周波数帯の等価騒音レベルとしてグラフを表示している。
尚、環境省によると、G特性音圧レベル平均値が92dB以上であれば、20Hz以下の超低周波による苦情の可能性が考えられるとされる。加えて、1/3オクターブ分析結果において、環境省による「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」と、「低周波騒音の物的苦情に係る参照値」との比較では、参照値を超える場合は低周波音による被害の可能性があるとされる。
4-1.全期間中のG特性音圧レベルの経時変化
(○○○○日19:08:11から○○○○日8:58:11)
図.G特性音圧レベル(dB)の経時変化
※ 縦軸:G特性音圧レベル(dB) 横軸:時間
・G特性音圧レベル平均値は66.9dBであった。
・G特性音圧レベル平均値は92.0dBを超過していない。
・また、瞬間的にG特性音圧レベルが92.0dBを超過した期間も存在しない。
4-2.1/3オクターブバンド分析による測定結果1
(心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)
図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)
※ 縦軸:dB 横軸:中心周波数
※ 青:心身に係る苦情に関する参照値 赤:各周波数帯の等価騒音レベル
表.心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の等価騒音レベル
・今回の測定により得られた等価騒音レベルは、環境省による「低周波騒音に
よる心身に係る苦情に関する参照値」をいずれの周波数においても超過して
いない。
4-3.1/3オクターブバンド分析による測定結果2
(物的苦情に係る参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)
図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)
※ 縦軸:dB 横軸:中心周波数
※ 青:物的苦情に係る参照値 赤:各周波数帯の等価騒音レベル
表.物的苦情に係る参照値と各周波数帯の等価騒音レベル
・今回の測定により得られた等価騒音レベルは、環境省による「低周波騒音の物的苦情に係る参照値」をいずれの周波数においても超過していない。
図.4-1グラフ拡大図
図.4-2グラフ拡大図
図.4-3グラフ拡大図
6.結論
G特性音圧レベルのグラフ、及び平均値を結果4-1に記載したが、期間中の平均値は92dBを超過していない。また、「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」「低周波騒音の物的苦情に係る参照値」を全ての周波数帯で超過していないことが明らかになった。このことから、測定対象となった場所では心身、または物的に被害を与えうる低周波音、いわゆる低周波騒音の発生は認められない。
しかし、結果4-1より、67dB前後の一定の音圧が確認されている。今回使用された低周波音レベル計NA-18AのG特性音圧レベルの測定レベル範囲は43dB~143dB(過負荷3dB含む)であり、その最低値である40dBを下回っている期間が見られないため、20Hzをピークとする、なんらかの低周波音が常時発生している可能性があるといえる。
7.受忍限度の根拠
7-1.環境基本法・環境基準
●騒音に係る環境基準 (H10.9.30環境庁告示第64号、H12.3.31東京都告示第420号))
7-2.参照値の根拠
●環境省の定めた「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」「低周波騒音の物的苦情に関する参照値」より
7-3.判例
東京地裁 平成6.5.9 判例時報1527号116 .
東京地裁 昭和 63.4.25 判例時報 1274号-49.
甲府地裁都留支部昭和63・2・26(判例時報1285号119)
京都地裁平成4・11・27(判例時報1466号126~)
福岡高裁那覇支部平成22・7・29(判例時報2091号162)