解体工事の騒音と振動によるうつ病の悪化と自宅の損傷に損害賠償請求が認められた事例

判決

・被告らは原告に合計136万8157円及び支払済みまで年5分の割合を支払うこと
・訴訟費用は1/3が被告の負担

事実

・原告は東京都立川市民で、うつ病の診断を受け自宅療養していた。
・被告は原告住居から直線距離55mの位置で解体工事を行なっていた会社ら。

騒音調査の結果

騒音計による暗騒音の測定により、工事が行われていない場合は約47dBの音圧が発生していることがわかった。

原告の主張

・工事の激しい振動により、原告建物に亀裂、サッシの歪み、ドア枠の湾曲、ユニットバスの歪み、クロスの浮き及び皺等の損傷が発生した。
・大型重機を使用した土間基礎解体工事等により、自身が激しい騒音と振動を感じた。
・周辺住民から建物が揺れるという苦情が寄せられていた事実もある。
・本件工事による振動が規制基準値を超えていたことは明らかである。
・被告は周辺住民から苦情を繰り返し受けていたのに、住民らの軽減策の要求を無視して工事を続行した。
・工事の騒音と振動は規制基準値を超え、受忍限度を超えていたことは明らかである。
・工事の騒音と振動でうつ病が悪化して、不安、不眠の症状が出た。
・被告らには工事の注意義務を怠ったため、過失があり、不法行為責任がある。
・被告らは411万8157円及び支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

被告らの主張

・本件工事は建物の解体工事であり、ある程度の振動が発生したことは認める。
・近隣の大型道路を走行する車両により原告建物に損傷を与えた可能性がある。
・近隣行われていたマンションの建築工事が原告建物に損傷を与えた可能性もある。
・工事の方法や使用重機の種類、台数を調整するなどして十分な配慮をした。
・苦情を受け、すぐに使用重機を変更した。
・解体したコンクリート塊等を人頭大に砕く小割作業の場所を変更するなどもした。
・直近の住民はともかく、周辺部の住民からは苦情の申出を受けたことはなかった。
・本件工事による騒音、振動は受忍限度を超える違法なものではなかった。
・原告が主張するような過失はなかった。
・損害賠償に関する原告の主張は争う。

裁判所の判断

・被告らが本件工事の説明を兼ねて近隣を回るよう指示したことは認められる。
・本件工事の騒音、振動に対して、原告の他にも苦情を申し入れていた。
・原告証人による証言からは震度3の地震のような振動が認められる。
・震度3の地震の程度から工事の騒音、振動は相当の程度であったと認められる。
・原告住居の不具合は、その時期からも工事が原因であったと推認できる。
・原告住居の大型道路から生じる最大振動レベルは80%レンジ上端値で47dB以下であり、この程度の道路の振動で住居に不具合が生じたとは認められない。
・原告住居近隣のマンション建設は、原告住居に不具合が生じた時期と異なる。
・工事は、原告の診断書から、うつ病に影響を与えたとも認められる。
・被告は原告に対して、建物修繕費、慰謝料、弁護士費用など合計136万8157円、及び支払済みまで年5分の割合による金員を支払うべきである。

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