小売店舗におけるエアコン室外機から発生する低周波音の測定と付近住宅に与える影響の評価(G特性音圧レベル解析・オクターブバンド分析)

1.報告概要

株式会社○○○○のご依頼により、低周波音レベル計による測定が行われ、G特性音圧レベルの解析、各周波数帯における測定値の解析を行なった。

2.測定条件

測定日時
○○○○日16:30~17:37
測定位置
住宅内2階、床上120cm、周囲に障害物がない位置、階下に住人有り
室外機の状態
未起動状態:近隣○○○○の室外機が起動していない状態
起動状態:室外機が通常通りの運転を行なっている状態
起動時:室外機の電圧が最も上がる状態(最も音が出る状態と考えられる)

3.測定機器と設定

・低周波音レベル計NA-18A
・周波数重み特性:G特性
・分析周波数範囲:1/3オクターブ分析
・時間重み特性:SLOW
・サンプリングレート:10sec

4.測定結果

測定期間中のG特性音圧レベルのグラフ、G特性音圧レベル平均値を示す。また、1/3オクターブバンド分析における各中心周波数帯の等価騒音レベルと環境省による参照値との比較をグラフ、及び表にして表した。結果の内訳は次のものとなる。
4-1:全期間中のG特性音圧レベルについて
4-2~4-3:室外機が未起動状態の1/3オクターブバンド分析
4-4~4-5:室外機が起動状態の1/3オクターブバンド分析
4-6~4-7:室外機の起動時の1/3オクターブバンド分析
4-8:室外機の未起動状態、起動状態、起動時の比較

尚、環境省によると、G特性音圧レベル平均値が92dB以上であれば、20Hz以下の超低周波による苦情の可能性が考えられるとされる。加えて、1/3オクターブ分析結果において、環境省による「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」と、「低周波騒音の物的苦情に係る参照値」との比較では、参照値を超える場合は低周波音による被害の可能性があるとされる。

4-1.全期間中のG特性音圧レベルの経時変化
(○○○○日16:30から17:37)

図.G特性音圧レベル(dB)の経時変化
※ 縦軸:G特性音圧レベル(dB)  横軸:時間

・G特性音圧レベル平均値は66.7dBであった。
・G特性音圧レベル平均値は92.0dBを超過していない。
・また、瞬間的にG特性音圧レベルが92.0dBを超過した期間も存在しない。

4-2.未起動状態の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数(Hz)
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)
赤:心身に係る苦情に関する参照値


表.心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は環境省による「低周波騒音による心身
に係る苦情に関する参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-3.未起動状態の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(物的苦情に係る参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)
赤:物的苦情に係る参照値


表.物的苦情に係る参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は、環境省による「低周波騒音の物的
苦情に係る参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-4.起動状態の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数(Hz)
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル
赤:心身に係る苦情に関する参照値


表.心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は環境省による「低周波騒音による心身
に係る苦情に関する参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-5.起動状態の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(物的苦情に係る参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)
赤:物的苦情に係る参照値


表.物的苦情に係る参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は、環境省による「低周波騒音の物的
苦情に係る参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-6.起動時の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数(Hz)
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル
赤:心身に係る苦情に関する参照値


表.心身に係る苦情に関する参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は環境省による「低周波騒音による心身
に係る苦情に関する参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-7.起動時の1/3オクターブバンド分析による測定結果
(物的苦情に係る参照値と各周波数帯の等価騒音レベルの比較)

図.各周波数帯における等価騒音レベル(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数
※ 青:各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)
赤:物的苦情に係る参照値


表.物的苦情に係る参照値と各周波数帯の測定結果(等価騒音レベル)

・今回の測定により得られた測定結果は、環境省による「低周波騒音の物的
苦情に係る参照値」をいずれの周波数においても超過していない。

4-8.室外機の未起動状態、起動状態、起動時の比較

図.各周波数帯における等価騒音レベルの比較(dB)

※ 縦軸:dB  横軸:中心周波数
※ 赤:未起動状態の測定結果
青:起動状態の測定結果
緑:起動時の測定結果

・未起動状態、起動状態、起動時において、最も音が大きくなるとされる起動
時において、最も低周波が発生していない。


図.4-1グラフ拡大図


図.4-2グラフ拡大図


図.4-3グラフ拡大図


図.4-4グラフ拡大図


図.4-5グラフ拡大図


図.4-6グラフ拡大図


図.4-7グラフ拡大図


図.4-8グラフ拡大図

5.結論

G特性音圧レベルのグラフ、及び平均値を結果4-1に記載したが、期間中の平均値は92dBを超過していない。且つ、結果4-1における66.7dBは、測定に
使用された低周波音レベル計NA-18Aの測定音圧最低値であるため、本来は
上記の値を更に下回る結果が得られる可能性が高い。また、全期間中には室外機の未起動状態、起動状態、起動時の比較を行うため、16:30~17:00が起動状態、17:00~17:30が未起動状態、17:30~17:37が起動時の記録となるが、それらの状態による差はグラフの平坦部分で全く見られていないため、室内における室外機の影響はほぼ皆無と考えられる。尚、上記グラフの突出部分は階下の振動音が瞬間的に伝わったものと考えられ、階下に住人がいる状態での測定、かつ瞬間的に音圧が上がっているため室外機の定常的な音圧による影響とは考えられない。尚、階下の住人からと考えられる振動においても92dBを超える期間は表れていない。
次に1/3オクターブバンド分析における結果では、「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」「低周波騒音の物的苦情に係る参照値」を全ての周波数帯で超過していないことが明らかとなった。
昼間、夜間の時間帯による差についても考察すべきではあるが、G特性音圧レベルにおいては参照値と約25dBもの差があり、夜間急に音圧が25dB以上上昇するとは考え難い。これは1/3オクターブバンド分析の結果においても同様のことが言え、最も差が小さい80Hzを中心とする周波数帯域においても約21dBの差があり、夜間急に音圧が21dB以上上昇するとは考え難い。
以上から、測定対象となった場所では外部からの低周波による影響は皆無といえ、心身、または物的に被害を与えうる低周波音、いわゆる「低周波騒音」の発生も認められない。

6.受忍限度の根拠

6-1.環境基本法・環境基準
●騒音に係る環境基準 (H10.9.30環境庁告示第64号、H12.3.31東京都告示第420号))
6-2.参照値の根拠

●環境省の定めた「低周波騒音による心身に係る苦情に関する参照値」「低周波騒音の物的苦情に関する参照値」より
6-3.判例
東京地裁  平成6.5.9 判例時報1527号116 .
東京地裁 昭和 63.4.25 判例時報 1274号-49
甲府地裁都留支部昭和63・2・26(判例時報1285号119)
京都地裁平成4・11・27(判例時報1466号126~)
福岡高裁那覇支部平成22・7・29(判例時報2091号162)

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