土処分場の建設による振動により各権利が侵害されるとした訴えが棄却された事件

判決

・原告の訴えを却下
・訴訟費用は全て原告の負担

事実

・原告は湿地※
・被告は土処分場建設事業の事業主体
※湿地周辺の住民らが湿地を原告として訴えを起こしている。

騒音調査の結果

調査が行われたという記載がない。

原告の主張

・湿地は自然の権利を有しており訴訟上の当事者適格を有するというべきである。
・本件事業により原告が有する様々な権利を侵害されることは確実である。
・湿地の人格権侵害を事前に防止すべく本件事業の差止めを請求し得る。
・被告が行っている緑化行為は生態系の撹乱を生じさせるため不適切である。
・原告は環境権に基づき本件事業の差止めを請求できる。
・原告は自然享有権を根拠として本件事業の差止めを求める。
・湿地を研究する権利に基づき本件事業の差止めを請求できる。
・原告が有する土地所有権の制約により本件事業を実施することは許されない。
・開発は県知事の許可を得た後に着工する必要があるが、手続きは履践されていない。
・被告が本件事業を実施することは公共の福祉に適合せず公共性もない。
・本件事業における工事の実施により騒音、振動が発生している。
・本件事業における工事の実施により粉塵、大気汚染が発生している。
・本件事業による原告の利益侵害の程度は受忍限度を明らかに超えている。
・被告は事業目録に記載された事業を行ってはならない。

被告の主張

・法令上、湿地に当事者能力を認めることのできる根拠は存在しない。
・原告らが主張する様々な権利はいずれも権利性を認めるだけであり、明確な実体を有するものではないので、それらを根拠とする差止請求には理由がない。
・工事着手後も効果的な環境保全対策の実施が可能となるため緑化行為は適切である。
・本件事業を実施するに当たり法令上の許可は不要であり、手続上の瑕疵はない。
・公共の福祉に関する原告らの主張は法的根拠を欠く独自の主張であり失当である。
・被告は大気汚染、騒音、振動等について基準に基づく調査を行っている。
・被告の事業は予測評価を実施して適切な公害防止計画を立てて実施するものである。
・被告事業は規制基準を評価目標とした数値を満足するものと予測評価されている。
・原告らが主張するような侵害行為が生じるおそれはない。

裁判所の判断

・湿地に当事者能力や権利義務の主体性を認める法令上の根拠は存しない。
・湿地を原告とする訴えは当事者能力を有しない訴えとして不適法である。
・原告らが主張する様々な権利は差止請求権の根拠として認めることはできない。
・本件事業における環境保全対策が不適切な内容であるとまでは言い難い。
・本件事業の実施に開発許可を得なければならない法的根拠は見当たらない。
・本件事業に手続上の瑕疵があるとは認められない。
・原告の騒音、振動についての主張は客観的数値によって裏付けられていない。
・被告の環境影響予測評価書の予測値と実際の騒音、振動に大幅な差異があるかどうかは不明といわざるを得ない。
・原告に影響を及ぼす程度の粉塵、大気汚染が発生すると認めるに足る証拠はない。
・本件事業の公共性はそれほど高いものではないとはいえる。
・被告事業による被害が社会生活上の受忍限度を超えると認めることはできない。
・原告らの請求はいずれも理由がないのでこれらを棄却する。

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